夏に似た瞳
121.「ふふ、そうだよ」
ごめんね、おにいちゃん。
そう言って、俺に近付いて来るジュペッタ。
……何がごめんだ。
これっぽっちも反省してないだろ。その目と口。見りゃあ分かる。
「ミツキはどこにいるんだ」
「さあ? どこだろうね」
「……」
だめだ、話にならねえ。
一発殴ってやろうかと思ったけど、どんどん体力が削られていく感覚に襲われて、思わず腕を下ろす。
だ、だるい……。
普通の……ゾロアークの姿だったら、まだ動けるんだけどな……。
「ねえ。いつまでぼくのまえで、ねているつもりなの?」
「……」
ぎろり、とタブンネを睨みつけるジュペッタ。
タブンネは、何も言わない。
ただ静かに、ジュペッタを睨み返すばかりだった。
ポケモンの中でもタブンネは、攻撃に対する耐久力があり、また体力も高い。
おまけにゴーストタイプの攻撃は一切受けない、ノーマルタイプのポケモンだ。
そしてそれはジュペッタにしても同じことで、ゴーストタイプであるジュペッタもまた、ノーマルタイプの技は一切受けることはない。
お互いその事を認識しているのか、二匹とも牽制し合うばかりで、攻撃する様子がみられない。
ちくしょう、このままじゃあ、埒が明かない。
まだ、ミツキの姿さえ見つけられていないのに。
それまでに少なくとも、助けられるだけの力は残しておきたい。
「……」
ここはタブンネの言う通り、一旦退いた方が良さそうだ。
そう思い、出口の方へ顔を上げる。
大きな扉は閉まっているが、窓からは明るい太陽の光がうっすらと射し込んで来る。
「どこにいくの」
「!?」
目の前に立ちはだかる、小さな影。
それでも感じるこの威圧感は、得体が知れないだけに、更に俺を追い詰める。
俺の心臓を、肺を、ぎりぎりと締め上げる。
どくり、どくり、と脈打っている。
酸素が足りない、と言っている。
「くっ……」
「はぁ」
「……」
「すきにしなよ。にげるなら、いまのうちだよ」
「……」
「でも、もうにどと、おねえちゃんのまえにあらわれないでね」
「な、んで……、そんなこと、お前に……っ!」
ぎりぎりと、奥歯を噛み締める。
でないと、重力に負けてしまいそうだ。
心が、折れてしまいそうだ。
もう……。
もう……。
いい加減にしろよ。
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