夏に似た瞳
125.両手に買い物袋を抱えた彼は、足早にこちらに近づいて、私の顔を覗いた。
「ミツキ、大丈夫か? 気分、悪くねえか? ふらふらするようだったら、いつでも言えよ。だっすいしょーとか、ねっちゅうしょーとか、何かよく分かんねぇことタブンネに言われたからさ、取りあえず、さっきそこでミックスオレ買ってきたんだ。後で調子が戻ったら、一緒に飲もうな。あと、モモンもあるぞ。医者も消化のいいもんだったら、どんどん食っていいってさ。あ、そこのチビに変なことされなかったか? あのさミツキ、そいつさ」
「お前もうるせえぞ、陽。少し黙れ。病み上がりの身体に堪えるだろうが」
「ん? あっ、お、おう……」
「そうだーそうだー、うるさいぞー」
「うっ……、くっ、なんかお前にだけは言われたくねぇ……!」
「……っふふ、あはは」
一際賑やかになった空間に、思わず笑ってしまう。
元気そうな陽を見て、何だか安心する。
……って、病室のベッドに座る私が言うのも、何だかおかしな話だ。
「……嬢ちゃん、こいつらにはもうちょっと厳しくしてくれねぇと……。後が持たねえぞ」
「え? あ、はい……」
「取り敢えず、どうして俺がここにいるのかとか、このチビクソ坊主の話とか、色々してやるからな」
「ねえねえおねえちゃん、このおじいさん、さっきからひどいんだよ? だいたい、ちびくそぼうずって、さっきよりも、もーっとひどくなってない?」
「いい加減にしろ坊主。また窓の外まで吹っ飛ばされてえのか」
「ああーん、こわぁーい」
「おい、陽もだぞ。話が終わるまで、大人しくしてろよ」
「う、うす…」
二人に再三の注意をした後、溜め息を吐いてこちらへ振り向く。
……お顔の皺がより深く見えてしまうのは、私の気のせいだろうか。
「……あの、なんだかすみません」
「いや、いいんだ。……それより、このまま話をしても平気か? 気分は悪くないか?」
「あ、はい。大丈夫です」
「そうか。なら、ちょっとばかし長くなるけどな、聞いてくれ……。まずはあの、生意気坊主の話からだな」
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