夏に似た瞳
127.「ぼくね、ときどきあのおうちからでて、ひとりでおでかけしてたんだ。クレセリアをさがしに」
「……クレセリアを探しに、一人で?」
「そうだよ」
「それじゃあ、あの時……私達と出会ったのは、その、お出掛け……の、途中だったの?」
「うん」
なんと。随分と長距離なお出掛けだ。
しかもそれが、伝承で伝えられている、クレセリアを探す目的だなんて。
「でも、でもね、ひとりはもう、さびしいんだ。だれもぼくとはおしゃべりしてくれないし、あるいてくれない。いっしょに、おうちにかえってくれない。みんなは、かぞくやおともだちといっしょなのに、ぼくだけひとりぼっちで、もっと、さびしいんだ。だから……」
「だから、ここに泊まるポケモントレーナーを、あのお家に……?」
「うん……」
「そっか、寂しかったんだね……」
下の、床ばかり見ている少年の頭を撫でてやる。
こんなに小さな男の子が、トレーナーに捨てられ、たった一人で過ごしていたなんて……。
しばらく撫でていると、少年はちらり、と私の顔を見て、えへへ、と笑った。
「おい嬢ちゃん。こいつに肩入れし過ぎるなと言ってるだろう」
兵太さんが、頭を掻きながら椅子に背を預けた。
……そんなことを言われても、同情してしまったものはしょうがない。
それに、相手はつい先程まで一緒に過ごしていた少年なのだ。
警戒しろと言われても、今一つ、ぴんと来ない。
「ううー。おじいさん、ひどいー……」
「酷いも何もあるか。理由がどうであれ、お前がやったことは許されることじゃあない。それだけは、分かってもらうつもりだ」
そう、きっぱりと言い放つ兵太さん。
兵太さんの言っていることは、厳しい様だが、正論だ。
今ここで少年のことを許してしまえば、少年は再び同じ過ちを繰り返してしまうかもしれない。
そうなってしまえば、それはこの行為を許してしまった、私達の過ちだ。
「……それじゃあ、この子はこれから、一体どうなるんですか? 何か処罰を……与えられるんですか……?」
恐る恐る、兵太さんに尋ねると、兵太さんは別の方向へ視線を移し、こう言った。
「ああ。それなんだが今、折り返しの連絡がつかなくてな。シキミってトレーナーで……。お嬢ちゃん、知っているかい?」
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