夏の陽の下

 15.

真っ青な空を背景に、赤い鉄骨がよく映える。
ホドモエの跳ね橋はその名の通り、船が通る際には橋桁が左右に上がって通行止めとなる可動橋だ。
その姿がリザードンというポケモンに似ている事が、この橋の別名、リザードンブリッジの由来だという。

そして今、まさに通行止めになっているこの橋の目の前で、私達は時間を持て余している。
ベンチに座り、跳ね橋を眺める。
鉄骨の両翼が天に向かって伸びている姿は、中々に壮大だ。
そんな気持ちの良い晴天の下、私は何とも言えない気まずい気持ちでいる。

「なぁ、どうしたんだよミツキ」

「……」

「おーい、どうしたんだってば」

「……」

「気分でもわりぃのか?」

「さっきの……」

「さっきの?」

「他人様の目の前で、何てことを言ってくれてるのよ」

もう、こんな恥ずかしい気持ちは生まれて初めてだ。
頭の中で彼の言葉がリフレインする。
好きなんだから。そう彼は言った。
一体いつから、そんな事になったのだ。初耳だ。
しかも、言った相手は見ず知らずのトレーナー。
マウンテンバイクに乗る彼はひとしきり笑った後、ごちそうさま、と言った。

後で名前を聞いた所、彼はハヤタという名前らしい。
彼のケンホロウは御風(ミカゼ)という名前を貰っており、それを羨ましがっていた人物は……言うまでも無い。

「えー、別にいいじゃねーか。ミツキも、俺のこと好きだろ?」

「……」

「じゃあ、嫌いなのか?」

「いや、嫌いではないけど……」

「じゃあ、好きなんだな!」

「……」

……ああ、分かったわ。
この人の言いたいことが。

「あなたの言う“好き”は、“モーモーミルクが好き”と同じ意味の“好き”なのね!?」

「ええ! 急になに言ってんだミツキ!?」

青い空に、赤い鉄骨。その中を、白鳥の様な美しいポケモンが優雅に飛んでいった。


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