夏を知る人
143.「ミツキ、離れろ!!!」
陽に突き飛ばされ、砂の上に尻餅を付く。
次の瞬間、巨大な轟音と共に目の前で砂が舞い上がり、一気に視界が遮られ、何も見えなくなってしまった。
「は、陽……?」
粉塵はしばらく収まる気配が無く、涙の滲む目を必死に凝らし、陽の姿を探す。
今のは、一体……?
一瞬聞こえたあの声は、女性のものの様だった。
「……」
やがて視界が晴れ、目の前の砂浜に大穴が出来ている事に気が付いた。
きっと、何かの攻撃を受けた痕なんだ。
いくら砂の上とはいえ、こんなに大きな穴を一瞬で開けてしまうなんて。
そんな攻撃を自分たちが受けたのだと考えるだけで、恐ろしい。
陽は無事だろうか。
海辺の方を見渡すと、そう遠く離れていない場所に、陽の姿があった。
動きが速くてよく見えないが、陽が相手をしているのは、ピンク色の洋服やスカートを身に纏った、女性……否、人間の姿をしたポケモンの様だ。
彼女が、さっきの声の主だろう。
きらきらと輝く光線や、長いリボンの様な武器を使って、陽を攻撃している。
陽は上手く避けている様だが、反撃できるほど体制は整っていない様だ。
いつまで持つか分からない。
こういう時、どうすればいいの……?
何故かは分からないが、相手は明らかに、私達を敵視している。
今から私がのこのこと陽の元へ行っては、彼の足手まといになるだけだ。
陽が私に、離れろ、とだけ言ってここに残したのも頷ける。
一方的に攻撃を仕掛けられたのだから、和解するのも難しいだろう。
話が通じる相手かどうかすら分からない。
そんなことを考えていると、海岸の隅で、謎の女性と陽のバトルを眺めている二匹のポケモンが居ることに気が付いた。
一匹は、薄いミントグリーンの髪に白いワンピースを羽織った、女性の姿に似ているポケモン。
もう一匹は、大きな白い綿毛を背負っている、小動物の様なポケモン。
彼等は加勢するでもなく仲裁する訳でもなく、ただじっと、陽たちの戦いを見ている様だ。
意味あり気に見つめるその様子から、ただの野次馬、という訳でもなさそうである。
彼等なら、何か知っているかもしれない。
そう思い、彼等に近づこうと一歩踏み出した。
その瞬間だった。
「あのポケモンは、君のものかね」
低い、重い声が、すぐ傍から聞こえた。
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