夏を知る人
145.二人が何をしてくれるのか期待していた事に間違いは無いのだが、その様子があまりにもアグレッシブであったため、私は少し、呆けてしまった。
二人は、陽達からやや遠く離れた場所で立ち止まったかと思うと、銀髪の女性の伸ばした腕が、ぽきりと折れ曲がり、そこから巨大な砲が現れたのだ。
衝撃的な状況に目を丸くしていると、その腕には瞬く間に太陽の光が吸収され、ついには大きな光の弾となった。
「チャージビーム、発射します」
どん、と重い音を響かせて飛んでいく光の弾は、陽と女性の間をすり抜ける。
それを合図に、陽と女性、そして、彼等の戦いを傍観していた二匹のポケモンも、こちらに気付いた。
その姿を確認した研究員の男性が、あちらへ聞こえる様に、声を張り上げる。
「そこのメスポケモン、よく聞きなさい。これ以上戦いを続けるのであれば、私達が相手になろう。一瞬で仕留めてみせよう。もし従わないのであれば、警察を呼んでやる。さあ、どうするかね」
……なんて、自信に満ち溢れた言葉だろう。
ここまで言い切る彼も彼だが、それを黙って聞いている女性も、中々の度胸の持ち主だ。
陽もその相手も、目を丸くして動こうとする気配がない。
「アニィ殿!」
真っ先に声を上げたのは、意外にも、あの白い綿毛を背負った小さなポケモンだった。
「ここは一度、退きましょう!」
その声は明らかに相手の女性に向けられたものだったが、私達にもはっきりと聞こえた。
それに反応し、苦虫を噛み潰したような顔をしたアニィと呼ばれた女性は、陽に向かい、大きな声でこう言い放った。
「次こそは捕まえてやるわ、ピスカ! 覚悟なさい!」
そして、陽から一歩、引き下がったかと思うと、一瞬にして、その姿は消えてしまった。
まるで空気に溶けて、透明な水になってしまったかのように、景色に染み込んで、消えてしまった。
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