夏を知る人

 146.

「全く、常識の無い奴等だ」

そう言って、眼鏡をかちゃりと上げる男性の視線は、遠い海辺から私の方へと向いた。

「疑って悪かったが、それは君の前科もあったからでもある。今後も、気を付けるように」

「は、はい……」

……少し反論したい気持ちもあるが、彼に助けて貰った事に変わりは無い。
素直に頷いておく。
すると、私達の間に、あの銀髪の女性が割って入った。

「ナガアキ、彼女は被害者の一人です。その様な発言は、不適切であると思われます」

「……」

「……」

……正直、驚いた。
彼の手持ちポケモンに、庇ってもらう事になるとは。
それは彼も同じだった様で、少し目を丸くさせた後、ばつが悪そうに海岸へと歩いて行った。
どうやら、陽の方へ向かっているらしい。
私と女性も、後を追う。

「すみません、許してやって下さい。ナガアキは、悪い人ではないのです」

「……え?」

砂浜を歩きながら、女性が話す。

「少し、言葉が足りないのです。あの人は」

「え……? あ。ふふ」

可笑しくて、つい笑ってしまった。
ナガアキという男性は、とても良いパートナーに恵まれている様だ。

「そうなんですね。ふふ、大丈夫です。ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ」

そう言って、ふ、と笑う女性。
少し表情が乏しい彼女だが、緩めた目や口元が、とても綺麗だ。
ふと、彼女が首元に降ろしていた大きなサングラスの様なものを掛け、前を向いた。
透明で、真ん中に大きな赤い円を描いている、SF映画に出てきそうな、ワンレンズ型のサングラス。
……どこかで、見たような……?

「先日、リバースマウンテンの洞窟入り口付近で、貴女をお見掛けしました。……またお会い出来て、嬉しいです」


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