夏を知る人

 148.

「ミツキー。何なんだよ、この懐かしいおっちゃんは」

「おい君。言葉を慎みたまえ」

私と銀髪の彼女が海岸の方へ近付くと、陽と男性が何やら言い争っている最中だった。
やはりというか何というか、どうにも馬が合わないらしい。

「ナガアキさんよ。……陽、助けてもらったんだから、お礼を言っておきなさい」

「ええー……。あ、ありがとうございます……?」

何が何だか分かっていない様子の陽。
私も続けて、頭を下げる。

「今回の件、本当にありがとうございました。私一人では、どうすることも出来なかったので……」

そう言って頭を上げると、ナガアキという男性は、ふん、と重そうな眼鏡を上げ、目を逸らした。
……全く。この人の態度だけは、私もどうも気に食わない。
その隣を見ると、銀髪の女性が静かに会釈しているのが見えた。

「はぁ。……零(レイ)、行くぞ」

「ナガアキ、もういいのですか?」

「これ以上、何も話すことは無い。あの消えたメスポケモンについても、こいつは何も知らない様だからな……」

「ですが……」

「いいから行くぞ。今日中のノルマは終わらせるからな」

「……はい」

内陸の方へと、すたすた歩いて行く彼。
その姿を目で追いつつ、女性が私達に向かってこう言った。

「私達、主に洞窟内部のポケモンの生息分布を調べていますが、今はイッシュ東部全体の大まかな調査も行っています。機会があれば、また会いましょう」

彼女はそう言い残すと、男性の横に並び、一緒に歩き始めた。
何度も振り返り、私達を気にする様子の彼女に手を振る度、彼女は会釈を返してきた。
崖の向こうへ行く姿は、夕焼けの暖かい光に包まれて、二人の影と共に、オレンジ色に溶けてしまった。


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