夏の夜の光

 152.

それから俺は晴れて自由の身となり、そして、森からやって来る追手から、延々と逃げ続けることとなった。
最初は追手の奴等に全てを話して、森へ帰ってやろうとも思った。
いつまで続くかも分からないこの果てしない逃走を繰り広げるよりは、森へ帰り、大人しく自分の罰を受ける方がよっぽどましだと、そう思った。
けれどそう決心する度に、ダークライのあの黒い煙の様な声が、俺の脳裏を掠めた。

捕まったら最後、どんな仕打ちを受けるか分からぬぞ。

……全く、とんでもない奴だ。
俺を勝手に逃がしておいて、後は何の手助けもしてくれない。
俺が、どんなリスクを背負おうとも。

まあ、どうせ俺がどんなに許しを請おうが、奴等は俺を許しはしないだろう。
一度はあの森で人間の心を操るという大罪を犯し、王を泣かせ、そして処罰を受ける前夜、逃げ出した。
……ほんと、嗤っちまうぜ。

いいさ。だったら俺は、どこまでも逃げてやろう。
あの森から、ずっとずっと遠くへ行ってやろう。
……そうだ、森の奴が知らない様な、人里に下りてみよう。
人間にも、化けてやろう。
そうして奴等を欺き、完全に逃げ出せたとき、俺はダークライの言った通り、自由を手に入れることが出来る。
本当の自由を、手に入れることが出来る。

「……やってやるさ」

その日に見た月を、俺は今でも忘れない。
晴れた夜空にくっきりと浮かぶ三日月は、酷く明るく輝く割には影の部分がはっきりと見えていて、俺はその影が生み出す暗闇に、深く吸い込まれてしまいそうだったんだ。


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