夏の夜の光
157.私の進化に必要な磁場が研究所に出来るまで、かなりの時間が費やされました。
自然に出来た環境を人間の力で再現して創り上げることは、大変に難しい事なのです。
特に我々ポケモンに与える力は、未だはっきりと分かっていません。
それだけに、研究員の調査は難航を極めたといいます。
更にもう一つ、研究員達を苦しめたものがあります。
それは他でもない、私達、実験サンプルです。
研究に、失敗は付きものです。
何度も何度も実験を行い、失敗し、その失敗から何が不足していたのかを考察し、改善して、また新たな実験を行う。
こうして、新たな発見が生まれていくのです。
しかし、この研究所で人工進化に成功した実験サンプルは、私を含め、とても少なかったのです。
私がコイルからレアコイルに進化した後、何匹ものコイルが私と同じ進化の過程を辿りました
しかし、その多くは失敗に終わってしまった、と聞いています。
失敗したそのポケモンがどうなったのを、私は知りません。
ただ私に分かることは、私は人工進化に成功した数少ないレアコイルである、ということです。
研究員達にとってこの実験は、多くの失敗は許されません。
たった一匹の失敗で、大きな損失になるからです。
研究員達は私達を進化させるこの特殊な磁場を、慎重に造らなければなりませんでした。
「君は、抵抗しないんだな」
電磁力の測定が終了した後、彼はぽつりと、そんな言葉をこぼしました。
それは視線をコンピュータに向けたまま、私に問うている様でした。
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