夏の陽の下
18.防波堤の上を、私はのんびりと歩いていた。
すぐそこには浜があり、砂や小さな貝殻が波に打たれている。
目の前には、見事なサンセット。
波が太陽の残した陽を浴びて、きらきらと輝いている。
海をゆっくり眺めるなんて、随分と久し振りな気がする。
こんなに素敵な場所でご飯を食べられるなんて。
柄にも無く、私はうきうきしていた。
この事を提案してくれた彼に、感謝しなければ。
そう思いながら、コンクリートの上に腰を下ろす。
せっかくの服が汚れてしまうが、仕方ないだろう。
砂の上に座るよりまだましだ。
夕陽とその陽に染まった海を眺めながら、彼の事を想う。
あの人は、まるで太陽の様な人だ。
そんな事を考えた。
昨夜、あの生ぬるい夜風に当たっていた時。
闇に溶けて消えてしまいそうな、否、溶けてしまいたいと願っていた私の前に、彼は現れた。
底抜けに明るい性格や口調、仕草。笑顔。
どれにしても、私に無いものばかりだ。
私は、ああいう風にはなれない。
正直、羨ましい。
人は、無いものねだりする生き物だ。
自分が持っていないものを他人が持っていると、嫉妬する。
そして嫉妬はいつしか、疎ましさへと変わる。
変わらないと信じていても、駄目だ。
相手に対する羨望なのだと言い聞かせても、駄目なのだ。
気付かないだけ。
気付かない、ふりをしているだけ。
そういうものだと思う。
……そういうものだと、思っていた。
私の彼に対するこの感情は、そうじゃない。
何か、別のものだ。
……何なのだろう。
そんな事を独り考える間、海は、着々と夜を受け入れる準備を進めていった。
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