夏に遭う時

 165.

*****

小さな悲鳴が聞こえて、思わず振り返った俺の隙を見逃さず、奴等は同時に攻撃を仕掛けてきた。
一匹は、前に海岸で闘ったニンフィア。
そしてもう一匹は、あの時一緒に居た、小さなエルフーン。

二匹相手な上に、苦手なフェアリータイプだ。
それに俺がゾロアークだと分かっている相手に、イリュージョンは使えない。
元々形勢は不利だったけれど、今の一発は、流石に痛かった。

「なぁに? そんな目で見て。あんたがよそ見してるからでしょ?」

「……お前等、まだ仲間が居たな。もう一匹……」

「……ええ、そうね」

「どこに居る」

「さあ、どこかしらね?」

「どこに居るんだって訊いてんだよ」

「ふん、知らないわよ。ねぇ、エルちゃん」

「えっ! あ、はい……!」

「……」

くそ、ふざけやがって。
嫌な予感に、胸がざわつく。頭が痛い。
ニンフィアのにやにや笑いもエルフーンの妙な慌ただしさも、俺の思考をぐちゃぐちゃにさせる。
こいつら、何を。
まさか。まさか……。

「貴様等、何をやっているんだ!!」

突如洞窟内に響き渡った、聞き慣れない男の怒鳴り声。
え。誰だ……?
そう思い二匹を見やるが、相手の方も、訳が分からないといった顔をしている。

「一度目ならまだしも二度目とは……!」

暗い洞窟の中、だんだんと近づいてくる、声。
そこに現れたのは見覚えのある黒縁眼鏡と、銀髪女だった。


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