夏を追う朝
171.「喜べゾロアークよ。多忙なこの私が、貴様をあのトレーナーが居るという夢の跡地まで送り届けてやる」
「えっ! お、おう……?」
「私が貴様の為にわざわざ時間を削り、スケジュールを変更したのだ。もっと感謝しないか」
せわしなくパンを食べ終え、せっせと身支度を始めたかと思うと、ナガアキは陽さんへ向かって、こんな事を言い出しました。
これでは、陽さんが混乱してしまいます。
「ナガアキ、陽さんがびっくりしています。一から説明してあげてください」
「ふむ。だが時間が惜しい。進みながら説明してやる。着いて来い」
そう言って白衣を羽織り、重たい皮の鞄を手に取って、部屋を出ました。
私と陽さんも、後に続きます。
ポケモンセンターを足早に出て行ったナガアキが向かった先は、カゴメタウンの西ゲート。
ここカゴメタウンから西ゲートを通ると十二番道路へ続き、その先にはイッシュ地方四大大橋の中でも最も古い橋、ビレッジブリッジが。そして更にその先には、十一番道路を挟んで、かつてはポケモンリーグへと続き、近未来都市として発展した街、ソウリュウシティがあります。
「ソウリュウシティに、かつて同じ職場で働いていた知人が居る。今はセッカシティに住んでいるが、仕事でこちらに来ているらしいのだ。そいつの持っている鳥ポケモンを借りて、サンヨウシティまで行こうと思う」
「えっ、鳥ポケモンを借りるって……。……おっちゃん、乗れるのか?」
「……貴様、これ以上不躾なことを言ったら、ビレッジブリッジの橋の上から突き落としてやるからな」
ナガアキの嘘か本気か分からない言葉を聞きながら、西ゲートをくぐり、十二番道路へ向かいます。
賑やかに歩を進める二人に、私は思わず、笑ってしまいました。
それに気付いたナガアキに、きっ、と睨まれてしまいます。
でも、仕方ないじゃないですか。
いつも冷静沈着な貴方が、何だか生き生きとしている様に見えるのですから。
「さあさあ、早くミツキさんを迎えに行きましょう」
二人をなだめ、背中を押します。
ミツキさん、待っていて下さいね。
一刻も早く、貴女の太陽を……陽さんを、お返ししなければ。
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