夏を追う朝
172.*****
重い瞼を開けると、そこには高い天井と、上品なシャンデリア。
気を失うなんて、本当にもう、何度目になるの。
ゆっくりと意識を取り戻すのと同時に、自身の過去と現在の状況に呆れ返る。
周囲を見渡そうと身じろぎをすると、そこは中々に大きなベッドの上。
私は今、白いふかふかのシーツに包まれているようだ。
さて。ここは一体、どこなのだろう。
「あっ、目が覚めたのね」
明るい声が聞こえて振り向くと、そこには見覚えのある、ピンク色の女性。
この人は、確か陽と…………。
「はじめまして。私の名前は桜。今は久方ぶりに、アニィとも呼ばれているわ。よろしくね、ミツキちゃん」
黙っている私に、そんな言葉を掛ける女性。
桜と名乗った女性は、そんな私を気にしているのかいないのか、次々と話を続けていく。
「ここはサンヨウシティのレストラン。数年前までは、サンヨウジムと呼ばれていた場所よ」
ここはゲストルームなんですって。
そう言って、私に近付いて来る女性。
「今、私の仲間がミツキちゃんを迎える準備をしているんだけど……、少し時間が掛かるみたい。それまでもうしばらく、待っていて頂戴」
ベッドの端に腰掛け、私に微笑む女性。
私を、迎える準備……?
どういうことなのだろう。
いや。それよりも、陽は?
陽は一体、どうしたのだろう。
陽は確か、彼女と戦っていた筈なのだ。あの、ジャイアントホールで。
その彼女が今、私の目の前に居る。
「…………」
考えが悪い方にしか向かなくて、頭から血の気が引いていくのが分かる。
陽は……、陽は一体、どこに居るの……?
「……もしかして、ピスカの事を考えてる?」
「え……」
「ピスカなら、大丈夫よ。多分ね。あの時、仲間っぽい人間の男とポケモンも居たし、助けてもらったんじゃない?」
「……」
助けてもらった?
仲間っぽい男と、ポケモン……?
疑問符が沢山生まれてくるが、ピスカ……陽が取り敢えず無事であるらしいと聞いて、ほっとする。
良かった。本当に、良かった……。
「ピスカには貴女がここに居るってことは伝えてあるわ。あれからもう一日経ったし、早くて明後日ぐらいにはここに来るかもね」
それまでには、事を済ませなきゃいけないんだけど。
彼女は部屋のドアを見つめて、そう呟いた。
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