夏の陽と月

 21.

太陽の陽の字で、陽(ハル)。
こっそり考えていた、彼の名前。
だって、あんなに頼まれたんだもの。

太陽の様で、それでいてからっと笑う彼へ、付けてあげたいと思っていた。

「ハルー!」

大声で呼んでも、彼が来ることは無い。
当たり前だ。
私は彼にこの名前を伝えていないのだから。
どうして、早く付けてあげなかったのだろう。
名前があれば、すぐに呼び止められたのに。
名前が、こんなにも大切なものだったなんて。

後悔しても仕方がない。
でも、勝手に付けた彼の名を、何故か叫ばずにはいられなかった。
市場の人混みを掻き分け、走り、私は彼の名前を呼び続けた。
どこ、どこにいるの?
早く見つけないと。
早く見つけないと。
私の、太陽。

「ハル、ハル、陽ー!」

「ミツキ!!」

聞き慣れた声と暖かい手が、私を包んだ。


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