夏の陽と月

 22.

「うおっ! うめーぞこのサンドイッチ!」

「ほんと、ソースがさっぱりしてて美味しいわ」

場所は、先程の海岸。
サンセットを眺めながらの食事とはいかなかったが、月に照らされた海を見ながらの食事もなかなか良いものだ。
今は街灯が近くにあるのでよく見えないが、空には無数の星が瞬く。

そんな景色を眺めながら、私はジュースをごくりと飲んだ。
陽が買ってきたものだ。
この町へ来てすぐ彼がどこかへ行ってしまったのは、飲み物を買いに行く為だった。
彼の元にはモーモーミルク、私の元には木の実のジュースが置かれている。
1日にそう何本も牛乳を飲んで大丈夫なのか知らないが…、モーモーミルクは彼のお気に入りの様だ。
一方の私はなぜ木の実のジュースかというと、彼曰く、私がモモンの実を気に入ってそうだったからとの事。
確かに、寝起きに食べたあの果物は甘くて美味しかった。
この人は、意外と他人の事をよく見ている。
因みに、この木の実のジュースはこれまたびっくりするぐらい美味しかった。
初めて食べた物の味が美味しいと、感動だ。

「へへっ、うれしーなあ俺」

「え?」

「なーまーえ!」

「……うっ。またその話?」

「だって俺、ほんとにうれしーんだぜ?」

さっきから、ずっとこの調子だ。
もう、いい加減に落ち着いて欲しい。

「太陽みたい、かぁ! 俺、そんな風に言われたの生まれて初めてだ!」

「ーーーーっ! もう、恥ずかしいから何回も言わないでよ!」

「いいじゃねーかー、これから何回も呼んでくれる名前だろー?」

「う……、まあ、そうね」

「これからもいっぱい呼んでくれよな、ミツキ!」

「……! う、うん」

何なのこのやり取りは。
とても恥ずかしいのだけれど。
この人と一緒にいると、どうも調子が狂う。
私らしく、なくなってしまう。

……私らしい私って、どんなだったかしら。


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