夏に残る風
203.おばさんには、二人の子供が居るらしい。
一人は、ミツキと同い年ぐらいだという男の子。今はイッシュから離れ、海外を旅しているポケモントレーナーらしい。
そしてもう一人は、その妹である女の子。
兄を追うようにポケモントレーナーになり、今は相棒のレパルダスと一緒にイッシュ全土を巡って旅をしているんだとか。
二人とも、この街にはしばらく帰って来てないんだって。
「去年までは娘が一緒にここを手伝ってくれてたんだけどね。ついに一人になっちゃった」
おばさんはそう言って、ちょっとだけ寂しそうに笑った。
毎年この祭りになると家族そろってどんぐり飴を売るのが恒例らしい。
夕暮れ時の忙しい時間帯には旦那が合流するらしいんだけど、そいつの仕事が終わるまでは一人で店を切り盛りするんだとか。
一体どこからそんなガッツが湧いてくるんだ、おばさん。
屋台という小さなテントの下で、会話をしながら沢山の飴玉を透明なケースに入れていく。
色ごとに分けた飴玉を客が小さな袋や瓶に好きなように詰めていき、それを売るのだという。
ちなみにこれは外国のお菓子で、イッシュでは滅多にみられないものなんだって。
どうしてそんなお菓子のことをミツキが知っているのか俺もおばさんも不思議がったんだけど、ミツキは貰った飴をほおばりながら、美味しいですよね、これ、と笑いながら言うだけだった。
一通り屋台の準備が完成したところで、おばさんが俺たちに声を掛けた。
「ねえ、ついでに売り子もしていかない? 息子たちの浴衣があるから、それを着て」
バイト代もはずむから、と綺麗にウインクして見せた。
ミツキは目を輝かせて、ぜひやらせてください、と張り切って応えた。
俺はそのミツキの反応が凄く意外だったんだけど、その理由は後々分かった。
どうやらミツキはその、ゆかた、ってやつを着たかったらしい。
ミツキ曰く、雰囲気が大事、なんだって。またかよ。
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