夏に残る風

 206.

ヒオウギシティの花火大会は、街の西に位置する高台の広場で見物する人がほとんどであるらしい。
そこが最も人が集まりやすく、また花火もよく見える位置なのだそうだ。
私達が奥さんから教えてもらった場所は、その高台へ昇る階段の脇から入った、雑木林へ続く小道の先だという。
本当にこの先にそんな場所があるのか不安になり、陽と二人で顔を見合わせたが、取り敢えず少し歩いてみよう、ということになった。
軽い傾斜が続いたが地面はしっかりとした土で固められており、思ったより歩きやすかった。

「あー、もう腹が痛ぇよ、俺」

「陽は食べ過ぎでしょ、まったく……」

「そう言うミツキだって、いっぱい食べてたじゃねぇか! ほんとはミツキも腹が痛ぇんだろー?」

「う、うう……」

にやにやと笑う陽に、私は唸ることしかできない。
本当は、陽が言うずっと前からお腹が苦しかったのだ。
そんな私の様子を見た陽に、また更に笑われてしまう。
だって、だって、どれも美味しかったんだもの。
ホットドッグに、ポップコーン、タコス、プレッツェル、りんご飴……。
ついはしゃいで、いっぱい食べてしまった。

「ま、食後の良い運動だよな!」

ずんずんと進んでいく陽の進む道の先にはもう、木々の拓けた場所が見えていた。
その時だった。

どん、どん。どん。

心臓を揺らすような大きく低い音が、辺りを包んだ。
花火だ。

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