夏に残る風
208.あの時、零は言った。
過去と決別するべきだと。
次への一歩をどこへ向かわせるべきか、考えなければならないと。
きっと、零は寂しかったんだ。
零とナガアキは一緒に旅をしていても、その心は決して同じではなかった。
零がどれだけ楽しく旅を続けていても、……そしてその先にある、ナガアキとの明るい未来を描いていても、ナガアキは零への贖罪の意識だけを背負って、生きてきた。
それがきっと、零は寂しかったんだ。
……もしかしたらミツキも、そんな風に思っていたのかもしれない。
そう思わせる日が、来ていたのかもしれない。
だからあの夜…………月の綺麗なあの夜に、ミツキは言ったんだ。
自分の答えを見つけておいて、と。
自分で納得できる方法を探しておいて、と。
その時のミツキの表情を、俺は、今でもよく覚えている。
もう、ミツキにそんな思い、させたくない。
「ミツキ。俺、考えたんだよ。自分が今、何をするべきか」
「……」
ミツキは黙っている。
黙ったまま、俺の話を聞いている。
「俺、今までずっと嫌いな自分から逃げてた。取り返しのつかないことをしてしまったことに、目を背けて、見えない先のことばかり考えてた」
「……」
「でも俺さ、思ったんだよ。嫌いな過去の自分から逃げても、逃げている自分が居る事実は変わらない。嫌いな俺は、俺でしかないんだ。…………だから、本当に大切なものも、守れないんだ」
「……」
「それに気付かせてくれたのは、……まあ、今まで出会ってきた、みんなのお陰なんだけど……。でも、一番それが大切だって気付かせてくれたのは、ミツキだから…………。だから、ありがとう」
「……」
「それで俺さ、考えたんだよ。ミツキが元居た世界へ帰ることができたら、俺も、自分の故郷に帰るよ。受けるべき罰を受けて、あの森で、もう一度やり直すんだ。そして……」
「だめ……」
……?
「………え?」
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