夏が終る日
213.*****
また、夢をみた。
夢なんて、いつ以来だろう……。
…………あれ?
でもいま、私は、夢のなかにいるんだっけ……?
じゃあ、私が今いるここは、一体、…………どこ?
「ミツキ」
優しい声が、聞こえる。
その声に促されるように、私の意識は、少しずつ、はっきりしてきた。
「は、る……?」
声が上手く、出なかった。
どうしてだろう。なんだかすごく、頭がぼうっとする……。
「おはよう。つっても、まだ夜中だけどな」
そう言って、彼は笑った。
彼の笑顔をみていると、安心する。
そう思った。
「ん? 起きるのか?」
「うん。……よい、しょ……」
「大丈夫か? 寝てていいんだぞ」
「ううん、大丈夫」
ゆっくりと起き上がって辺りを見回すと、ここはどうやら、ポケモンセンターの宿舎らしい。
私はベッドで一人、横になっていたようだ。
またか……。一体、いつの間に……。
あの時、私は、陽に酷いことを言ってしまって、その後、桜というポケモンに、また出会って、それで……。
……それで、その後…………あれ?
「……え? ……あれ? ゆ、ゆかた……っ!」
「うん?」
「浴衣! 陽……! 私、どうして……!」
どうして、普通の服を着ているの?
あの時、借りて着付けていた、浴衣は……?
混乱しながらも、横の椅子に座る陽に、問い詰める。
すると彼は、気まずそうに頭を掻きながら、私に言った。
「あー……。…………ごめん。俺が着替えさせた」
「え!?」
「冗談だよ」
「……」
……なんて酷い冗談だ。
というか、冗談などでは済まされない。
あははと声を上げて笑う彼の胸に、右ストレートをお見舞いする。
「うわっ、いや、ごめんって! あははっ。…………着替えはな、桜ってやつが手伝ってくれたんだよ。ああいう服のこと、よく知ってるんだってさ。あの時のミツキ、相当ふらふらしてたけど、何とか頑張ってくれたって言ってたよ。……あと、おばさんにはミツキのこと、祭りの途中で具合が悪くなったから、先に帰らせたって言ってある」
浴衣も、その時に返したよ。
そう言って、陽は困った様に笑った。
……多分、私がとても複雑な顔をしているからだ。
「お礼なら、俺からもちゃんと言ったけど……」
「私も自分の口で、直接言いたかったのよ」
「そう言うと思ったぜ……。でも自分で言いたいなら、ちゃんと身体を休ませてからにしてくれよな」
「え?」
何の話か分からなくて、陽の顔を見た。
すると何故か、少しだけ怖い表情をした陽が、私を見据えていた。
「……ミツキ。どうして今、自分がこんなことになってるのか、分かるか?」
「……え?」
「どうして今、ここで目が覚めたと思う?」
「……陽? あの……」
陽が何を言っているのか、よく分からない。
表情に出ていたのだろう。陽は一度頷いて、私に話し始めた。
「ミツキ、ずっと眠ってたんだよ。突然睡魔に襲われたようだったって、桜は言ってた」
ずっと、眠っていた……?
桜と名乗るあの女性と出会った、後から……?
「俺が聞きたいのは、どうしてそんな急に眠くなっちゃうんだよってことなんだけど……。ミツキ、自分で分からないか?」
「うん……」
「心当たり、ないのか?」
「え……。……う、うん」
「本当に?」
「うん……」
「嘘つき」
どくん、と、心臓が跳ねた。
「俺も聞いたよ。あの三匹から」
「え……」
顔を上げると、陽は少し、笑って言った。
「ミツキが聞いたこと、俺も全部、聞いたよ」
言葉が、出なかった。
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