夏が終る日
217.*****
あれから、どれだけの時が過ぎたのだろう。
どれだけの時を、待ったのだろう。
いや、厳密にいえば、時は関係無いのかもしれない。
僕の時間は、あの日から、進んでいなかったも同然なのだから。
「なぜ……! なぜ、ピスカがその様な罰を受けなければならないのだ!!」
僕は叫んだ。
必死だった。
友が独り、重い罰を受けねばならないのだと知って。
「あれは魔の花を使い、人間の心を操ったのです。その名を口になさってはいけません、王。呪われてしまう」
「違う!! ピスカにそれを命じたのは、僕だ!! 何度も言っているだろう!! それなのになぜ僕ではなく、ピスカがその様な目に遭わねばならないのだ! 罰せられるべきは、この僕のはずだ!!」
「…………王、声が大きいですぞ」
「あ……!」
口を塞がれ、四肢の自由を奪われた。
あの瞬間、僕は思い知った。
自分の愚かさを。自分の、罪の重さを。
「……仮に。貴方様がそれをしたとして……。下々の者に知れたら、一体どうなるとお考えで……? 王が、お妃様の心を操り、人間どもの心を操り、意のままにしようとしたなどと……。そんなことが知れたら、この森の……いや、ここ近辺の均衡は、一気に崩れ去ってしまうことでしょう」
「あ……、あ……」
「そのようなこと、我々はさせません。……王よ。ご自身の立場、よくお考えになってくださいませ。…………では」
そう言って立ち去る背中を、僕はただただ、見送ることしか出来なかった。
絶望が一息に胸へと押し寄せ、肺がつぶれてしまいそうなほどに、泣いた。
いくら泣いても、泣いても、悲しい気持ちが癒えることはなく、いくら泣いても、叫んでも、誰も、何も言わなかった。
こういうとき、いつも背中を叩いて励ましてくれた友は、もう、いない。
ピスカの実刑期間が過ぎ、再び目覚めたところで、きっと、ピスカはもう、この森には居られないだろう。
もちろん、僕と一緒に過ごすことだって、もう、できない…………。
その事実が、ただひたすらに、かなしかった。
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