夏の夜の夢

 223.

*****

瞼を開けると、そこには誰かの背中があった。
誰かが私を背負って、夜の道を歩いているらしい。

「あ、起きたか」

「陽……」

ある程度予想していた声に、安心する。
一体どうしたの、とか、重くないの、とか、色々訊きたいことはあったけれど、そんなことは今、どうでも良かった。
何故だかひどく、頭が重かった。

「ミツキ、大丈夫か?」

「うん……」

返事をするものの、思った様に声が出なかった。
いや、おかしいのは私の声ではなく、耳なのかもしれないし、頭なのかもしれない。
とにかく身体のどこかが、私の一部ではないような錯覚に陥っていた。

「ごめんな。ミツキがこんな状態だからとにかく急いで移動しなくちゃいけなくて、取りあえずおんぶして向かってるんだけど……。ミツキ、辛いか?」

「ううん。私は、平気……」

「そっか。ならいいんだ」

そう言って、陽は再び前を向いて歩きだした。
どこに向かってるの、と尋ねたら、帰る場所だよ、と返された。
あ、と小さく声をあげた私に、陽は少しだけ笑って、言った。

「ミツキ。空」

え?
言われたことの意味が分からなくて、首を傾げる。

「見て」

言われるがままに、空を見上げた。


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