夏の夜の夢
224.「あ……!」
そこに見えたのは、一筋の光。
…………いや、一つなどではない。
また一つ、また一つと光線が瞬き、消えていく。
流星群だ。
「ナントカ座流星群って、ちゃんと名前があるらしいんだけど……。俺、忘れちまったよ」
陽も顔を上げ、流れる星を見守る。
広い荒野、夜空を隔てるものは何も無く、まるで四方を星空に囲われているようだった。
「すごい……。綺麗ね」
「そうだな」
陽は一度うつむき、言葉を続けた。
「まるで魔法みたいだ」
歩くスピードは変わらない。
けれどそこには確かに、ゆっくりとした時間が流れていた。
そんな中ぽつり、ぽつりと、陽が話し始めた。
「俺、最後に言えなかったんだ、あいつに。どんなことがあっても、俺たちはずっと、友達だって……」
無音の流星が、夜空を彩る。
「俺、もう後悔したくないよ。大切なものを、大切にしたいんだよ」
背中越しに声が響いて、私の鼓膜を震わせた。
「ミツキ」
「うん?」
陽の呼び掛けに返答する。
けれどその声が思うより弱々しくて、びっくりする。
そんな私の声を聞いた陽は苦笑した後、言葉を続けた。
「ミツキ。あっちの世界に行っても、元気で。そしてどうか、幸せに」
「……」
「これは俺の、願いだよ」
陽が空を見上げたのが分かった。
空には満天の星空。
流星の嵐。
見なくても分かる。
見なくても、分かる。
「叶えてくれなきゃ困るぜ、ミツキ」
そう言って、陽は笑った。
「俺もさ、頑張ってみるよ。生きられるように……元気に、生きていけるように。……エル達には、そんなに上手くいかないぞって言われたけど」
陽の口調はとても明るかった。
それが何に照らされているのか、分からないくらいに。
「でも俺、この先どんなに辛いことがあっても、ミツキが元気に生きてるんだって思ったら……、幸せに暮らしてるんだって思ったら、乗り越えられる気がするんだよ。……俺も、生きていける気がするんだよ。だからミツキ」
背中越しの言葉が、私の瞼を震わせた。
「幸せになってくれよ」
「……」
「今までありがとう。元気で」
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