夏の夜の夢
225.「…………陽、私……」
「うん?」
陽が少しだけ耳をこちらに傾ける。
きっと私の声がひどく掠れていて、聞こえづらいのだろう。
でも、でも……。
本当に思っていることは、伝えなくちゃ。
今、伝えておかなくちゃ。
「私はずっと、陽と一緒にいたかったよ……。陽と一緒に、幸せになりたかったよ……」
そう言って私は、彼の背中に顔をうずめた。
もう、何を言っているんだ私は……。
ぐるぐると思考を巡らせる。
すると突然、身体に強い衝撃を受けた。
「きゃあ!?」
「そういう可愛いこと言ってるとさぁ!!」
どうやら陽が、私を勢いよく背負い直したようだ。
び、びっくりした……。
「……」
「……」
「……な、何……?」
「……………………何でもない」
急にふてくされた様な口調になる陽に戸惑う。
何なのよ、一体……。
分からなくて黙っていると、陽は困った様に空を見上げて言った。
「ミツキのそういうとこ、ほんと心配になるんだよなあ……」
「な、何よ……」
「ミツキ、本当に気を付けてくれよ……? その、色々と……」
「色々とって何よ」
「ううーん……」
言葉を詰まらせる陽は、何か本当に悩んでいる様子だった。
それが少し可笑しくてふと笑ってしまったのだが、陽はそれに気付かず、何かを決心した様に深呼吸をして、言った。
「俺はミツキの選択したことだったら、それが正しいことだと思う。俺はどんなことがあっても、ミツキのパートナーだ。どこにいても、何があっても、ずっと、ずーっと、ミツキの味方だからな」
予想しなかった言葉に面食らう。
「それだけは、覚えていてくれよ」
そう言って、彼は少し溜め息を吐いた。
その様子が余りにも寂し気に見えてしまって、私はつい、励ます様に言ってしまった。
「それじゃあそっくりそのまま、私も同じ言葉を返すわ」
「え?」
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