夏の夜の夢

 226.

夜空に向かって、言った。

「陽、元気でね。……頑張って、必ず、必ず、幸せになってね。応援してるわ。ずっと……、ずっと、私は、貴方の味方よ」

そう言って私は彼の首筋に、自分の額を当てた。
目を瞑っていても、そこには明るい光が灯っているようだった。
あったかくて、安心する。

「なんだよ、それ」

陽は笑った。

「俺の言ったことと、ちょっと違う」

「えっ? 違わないでしょ」

「違うよ」

「どこが?」

「足りない。でもいいんだ」

「え?」

「俺、諦めないからな」

その言葉を最後に、陽は何も応えなくなってしまった。
何を、とか、一体どうしたの、とか、色々訊いたけれど、陽は何も言わなかった。
困っている私をみて笑っている様だったから、怒っている訳ではないんだろうけど……。

「意地悪」

小声で言うと、陽がくすくすと笑っているのが分かった。
その後、私は何かを言おうとしたんだけれど、忘れてしまった。

ぼんやりとした頭の中で、そんなことを考えていた。


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