夏の陽と月
26.「ミツキはどっか、行きたいとこってあるか?」
「え?」
椅子に腰掛け、ぴこぴことタウンマップを操作する陽。
私達はポケモンセンターの宿舎内で、簡単な食事を済ませ終わっていた。
今日の朝食は、昨日の夕食に引き続きサンドイッチ。
ただ、今回は海の幸が沢山詰まったシーフードサンドイッチだ。
具材がサーモンやアンチョビ、海葡萄など、一風変わったもので出来上がっており、新鮮な魚介が揃う海辺の町ならではの食事で、とても美味しかった。
そんなゆったりとした時間に、彼は私に尋ねてきた。
行きたいとこ、とは、どういう事なのだろう。
「見てみたいとことか、食べたいものがあるとことか……」
「……。それって、観光したい所はあるかってこと?」
「そう! そういうこと!」
そう言って、タウンマップを差し出して来る。
「イッシュでもいいし、外国でもいいぜ!」
彼曰く、これから向かおうとしている町には空港があるらしい。
空の便があれば外国へもすぐに行ける、という事だ。
……まあ、きっとそんな遠くへ行く様な賃金は持ち合わせていないから、それは無理だろう。
それに、私には観光よりも大切な事がある。
「あのね、陽……」
タウンマップを受け取り、その画面を見る。
どうやら観光地を紹介する記事を開いているらしい。
そこには、様々な地方の名所がカラフルなレイアウトでちりばめられていた。
個性豊かな街並み。
色とりどりの景色。
人々の、ポケモンの、笑顔。
なんて、なんて楽しそうなんだろう。
行ってみたい。
私も、陽と一緒に。
彼とだったら、きっとどこへ行っても楽しい。
けれど、
一呼吸置いて、私は続ける。
「私、帰りたいの。元の世界に」
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