夏の陽と月

 27.

そう。観光などと言っている場合ではない。
私は一刻も早く元の世界へ帰りたいのだ。
帰らなければ、いけないのだ。

大切な家族がいる世界へ。
心許せる友人のいる世界へ。
ポケモンなど、いない世界へ。

タウンマップから、陽へと視線を移す。

ああ、凄く、胸が苦しい。
肺の奥を、誰かにぎゅう、と掴まれた感覚。
呼吸はしているのに、上手く酸素を取り込めない。
こんな感覚に陥ったのは、生まれて初めてだ。

理由は分かる。
分かってしまった。
少し前から予想はしていた。
いつかこうなる日がくるのではないかと。
そして、その先の事も。
そう。
これは、きっと

「ごめん……。陽」

きっと、彼が悲しそうな表情を浮かべるから。

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