夏の陽と虫

 33.

「ご主人ー! こんな所にいたのー」

ちょこちょこと、こちらへ歩いて来る子供が一人。
十歳に満たないぐらいの、醒めるような黄色いボブカットヘアの少女だ。
……今更、髪色で驚かない。恐らく、彼女もポケモンなのだろう。
萌葱色のポンチョを身に纏っているその子はアーティさんの足にしがみ付き、こちらを見る。

「ご主人ー、……だれー?」

黒いくりくりとした、可愛らしい目で見つめてくる。
知らない人が自分のトレーナーと話していて、警戒しているのかもしれない。
何だか、申し訳ない。

「ああー、いま知り合ったトレーナーさんだよぉ」

「こんにちは。ミツキです」

しゃがんで、目線を合わせる。
目線を下げると、彼女の表情がよく分かる。
どうやら、恐がられてはいない様だ。良かった。

「ミツキー?」

「うん」

「結麻(ユマ)なの。ご主人が、付けてくれたの」

アーティさんに似て、なかなか特徴的な口調だ。
少し微笑んだ顔が可愛らしくて、思わず私の顔も綻ぶ。

「そっか。よろしくね、結麻ちゃん」

「よろしくなのー」

そんな結麻ちゃんが、ふと、上へ目を向ける。
陽を見上げているのだろうか。
私も、つられて陽を見る。

「ちょ、ちょっと! なんて顔してるの!」

そこには、何とも言い難い……険しい顔をした陽がいた。


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