夏の陽と虫

 34.

すぐに立ち上がり、結麻ちゃんの視線を遮る。
幼い女の子相手に、なんて顔を見せているのだ、陽は。

「なんだよ、ミツキ」

「何だよ、じゃないわ。さっきから何なの? 陽、おかしいわよ」

「え? そんなこと、ねぇけど……」

「あるわよ! ねぇ陽、一体どうしたの?」

いつもの、あの明るい陽はどこへ行ったの?
いつもの笑顔を、さっきから全く見せてくれない。
不思議がって陽を見つめるが、陽は視線を泳がせて目が合わない。
本当に、どうしちゃったの?

「陽……?」

「ねぇ、キミ達さぁ」

突然、アーティさんが口を挟む。

「まだ出会って日が浅かったりする?」

「え……」

どうして。
どうして分かってしまったんだろう?
確かに、私達は出会ってから2、3日しか経っていない。
別に隠していた訳ではないし、知ってもらっても構わない。
だが、わざわざ言ってもいないのに知られているのは、少々気味が悪い。

「ハッサムくんさぁ」

「……」

アーティさんが、陽の方を向く。
陽は、表情を変えずに黙ったままだ。
本当に、どうしてしまったんだろう。

「ハッサムじゃないでしょ、キミ。どうして彼女に黙ってるの?」


prev / next

[ back ]