夏の陽と虫

 36.

*****

夕方前の強い日差しが、窓辺に注ぎ込んでくる。
場所は、ポケモンセンターの図書コーナー。
今は、少しすみっこの方に移動している。
俺の横には、ミツキ。

ヒウンジムのリーダー、アーティは、離れた所…俺たちの会話が聞こえない場所にいる。
深い話をするのに自分はジャマになるだろうとか言って、去って行った。
……結麻を残して。
何だよ。用心棒ってか。
俺が虫タイプのこと苦手なの知ってて置いてったな、あいつ。

そんなことを考えてると、ミツキのヒザに座っている結麻と目が合った。
やばい。やっぱ苦手だ、俺。
ミツキが妙に気に入ってんのも、気に入らねぇ。
……これって嫉妬、なのか?
俺より小さな、女の子に?
うわ、すげーカッコわりぃじゃん。俺。

「ハル、にらまないでほしいのー」

「陽……。一体どうしちゃったの?」

ミツキが、心配そうにのぞき込んでくる。
う、うわー……。
変な心配かけさせちまってんじゃねーか。
くそ。こんなはずじゃなかったのになぁ。
アーティのせいで、予定が狂っちまった。

「ミツキ、俺さ」

「うん」

「昨日、ナイショにしてることがあるって言ったよな」

「ああ、うん」

「……」

「……。もしかして」

「……そう。ナイショって、このことだったんだよ」

「……」

「ごめんな。黙ってて……、変にビビらせちまって」

「ううん……いいの」

ミツキが、うつむいて応える。
全然よくないじゃねーか、その反応。
このまま話を続けたら、どんどんミツキを傷つけていく気がして仕方ない。
いや、現に傷ついてると思う。
だって、俺が黙ってたのは事実……、だからなぁ。

ああでも、言わなきゃ。
いま言わなきゃ、もうミツキと一緒にいられねぇ。
それだけはイヤだ。
絶対に、イヤだ。
ごめんな。ミツキ。
本当に、ごめん。

「俺、ハッサムじゃねーんだ。ハッサムに化けた、……別のポケモンなんだ」

俺の正体は、ゾロアーク。
人やポケモンの目を欺く、化け狐ポケモンだ。


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