夏の陽と虫

 38.

「なんで泣くんだよ。ホント、泣き虫だよなぁ。ミツキは」

そう言って、笑ってみせる。
上手く笑えてるか、知らねーけど。

「だって……」

「ん?」

「だって……、嬉しかったの」

「……え?」

嬉しかった?
予想外の言葉に、たじろいてしまう。
だって俺、さっき……。

「俺、ミツキのこと、騙してたんだぞ? この能力で、ハッサムに化けて……。しかも、ずっと黙ってたんだぜ? それなのに」

「そんなこと……、関係、ないじゃない」

「え?」

なにを言ってるんだ? ミツキは。

「ずっと黙っていたのは、この世界に来たばかりの私を、混乱させない為……だったんでしょう?」

「いや、それは……」

それは確かに、そうなんだけど……。

「気味悪くないのか? だってずっと、ハッサムに化けてたんだぞ? 俺」

ミツキだって、気付いてなかったじゃないか。
そう言うと、ミツキは目に涙を残したまま笑った。
うわ。その顔は、反則……。

「あははっ、そうね、全然気づかなかったわ。凄い能力を持ってるのね、陽って」


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