夏の白い人

 42.

「いらっしゃいませ! トーナメントの参加受付をなさいますか?」

「え!? あ、いえ、観戦をしたいのですが……」

そう言って、受付の女性にアーティさんから貰ったチケットを渡す。
トーナメントに参戦するつもりなど毛頭なかったのでたじろいてしまったが、トレーナーなのだからそうなるのは当たり前かと思い直す。
一方そのチケットを見た女性は、驚いた様に視線をこちらへ返した。

「まあ、プレミアムチケット! これは失礼致しました。少々お待ちください」

そう言って、取り出した無線機で何かを話し出す彼女。
陽と私は思わず顔を見合わせた。
……アーティさん、そんな高価そうな……プレミアムチケットなどを私達に渡して良かったのだろうか。

しばらくすると、男性の係員がやってきて、私達を別の部屋へと案内してくれた。

「こちらで少々お待ちください。また、お迎えにあがります」

係員はそう言って頭を下げ、部屋を去って行った。
高そうなカーペットやソファでレイアウトされているここは、プレミアムチケットで入場する者の控室だという。
ここで待機後、優待観戦席へと案内されるのだとか。

「アーティのやつ、一体なに考えてんだ?」

大きなソファにどかっと座り、陽が言い放つ。
言い方はともかく、私も同じ疑問を持っている。
参戦するならまだしも、観戦するだけでこんな待遇を受けるなんて。

「お金持ちの人の考えは、分からないわ……」

そんなことを呟くと、タイミングを見計らったかの様に、ドアをノックする音がした。

「……? あ、どうぞ」

案内されるには、いささか早すぎる時間なのだが……。
失礼致します、と少しドアを開け、現れたのは先程の男性係員だった。

「申し訳ありません、ミツキ様。少し、よろしいでしょうか……?」

おずおずと本当に申し訳なさそうな顔をして訊いてくる男性係員。
何か、あったのだろうか。
どうぞと促すと、彼は私へ近付き、こそっと耳打ちする。

「実はもうお一方、プレミアムチケットにて観戦なさるお客様がいらっしゃいまして……」

「え? ああ、はい」

「それが、その……」

「……? あ、もしかして、席が空いて無いとかですか? 良いですよ」

私は一般席で大丈夫です、と返す。
元々そのつもりだったのだから、問題無い。
しかしその返事を聞いてもなお、係員の表情は曇ったままだ。

「いえ、そうでは無くてですね、そのお客様というのが、その……」

「……?」

そうでは無くて、何なのだろう。
言いにくそうなその様子も、疑問に思う。
凄く傲慢な大富豪でも来るというのだろうか。
思わず首を傾げる。

「おいお前ら、顔がちけーよ! 俺にも聞かせろ!」

そう言って、陽もすぐ傍までやって来た。
陽と私、二人の顔を見て、彼は頷きこう言った。

「今からいらっしゃるお客様は、カロス地方のチャンピオンにして、世界的に有名な大女優、カルネ様なのでございます」


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