夏の白い人
44.「イッシュリーダーズバトルトーナメント! いよいよ開幕ですっ!」
精気に満ち溢れた司会者の掛け声と共に、観客の大きな歓声が上がる。
私達の居る優待席はアリーナ型の会場内で2階スタンド席、中央列にあたり、バトルフィールド全体を眺められる位置だ。
また会場中央にある巨大なメインモニターが正面に見え、バトル中の細かな様子を臨場感を持って観る事が出来る。
バトルフィールドからは少し離れているものの、フィールド自体が広いので肉眼でもその迫力は充分だろう。
そんな特等席とはいえここは一般席に近く、尚且つ会場の中央付近に居る為か、観客の熱気と一体感が嫌というほど伝わってくる。
「凄い……」
その様子に圧倒されて呟いた言葉は、耳が痛くなる程の大きな歓声に掻き消されてしまった。
ちら、と陽を横目で見ると、他の観客と同じ様に拳を高く掲げて声を上げている。
なんだ、しっかり楽しんでいるじゃないか。
くすくすと笑っていると、その様子をカルネさんに気付かれてしまった。
「あなた達、公式試合を観るのは初めてなんだっけ?」
カルネさんが、耳元で大きく私に囁く。
「ええ。だから、とても楽しみです」
私も、カルネさんの耳へ顔を近づけて応える。
大きな声で叫ぶように話しているのに、ほんの少ししか耳に届かない。
それでもカルネさんは私の声を拾ってくれた様で、にっこりと微笑んでくれた。
「じゃあ、今日は目一杯楽しんでね!」
カルネさんが私にガッツポーズを送った直後、ひときわ大きな歓声が会場を包む。
その盛り上がりに応えるかの様に、司会者が花道に現れた一人の女性トレーナーの名を叫ぶ。
「大空のぶっとびガール、フウロ! 自慢の技で、ぶっとばせーっ!!」
観客の歓声に大きく手を振って応え、楽しそうに歩を進める明るい髪色の女性。
ロングヘアの髪を水色の髪飾りで特徴的に結っている。
健康的な身体で露出の高い服を着こなしており、少し日に焼けた爽やかな肌が良く似合う。
フウロさんといえばフキヨセシティのジムリーダーで、飛行タイプポケモンの使い手である。
空を舞うポケモン達がよく似合うであろう、素敵な女性だ。
大きな歓声が上がるのも頷ける。
「あ、対戦者が来たわよ!」
フウロさんを眺めていると、カルネさんにぽんぽんと肩を叩かれた。
振り返ると、フウロさんとは逆方向の入り口から、もう一人の参戦者が現れた。
「あっ」
「げ……」
思わず、声が出てしまった。
まさか一回戦目で彼の戦いを観られるなんて。
その驚きは陽も同じ様だったが、こちらは先程とは打って変わってとても嫌そうな顔をしている。
「知ってるトレーナーなの?」
カルネさんは意外そうに尋ねてきた。
知っているも何も、彼がいなければ私はこの会場に足を運ぶ事さえ無かっただろう。
私は膝に置いていたプレミアムチケットをカルネさんに見せ、説明した。
「このチケットは、彼……アーティさんから頂いたものなんです」
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