夏の白い人

 45.

会場のボルテージに似合わず、ゆったり、のんびりと花道を歩くアーティさん。
そんな独特の雰囲気からか、またはその整った顔立ちからなのか分からないが、女性からの黄色い声援が多い。
時折その声に応えるかの様に優しく手を振るアーティさんに、歓声は尚更大きくなる。

「凄いなぁ……」

改めて、アーティさんは有名なポケモントレーナーなのだと実感する。
昨日すぐ近くで会話を交わしていたとは到底思えない。
何だか不思議な感覚だ。
ふと、アーティさんの視線がこちらを捕える。
遠目から見てもそれが分かったのは、彼がにこりと微笑んでこちらに手を振ってきたからだ。

「げぇ……」

「わぁ! 陽、アーティさんが手を振ってくれたわよ!」

陽はあからさまに嫌がったが、私は笑って手を振り返し、それに応えた。
その様子に、カルネさんは驚いた様子で私に尋ねた。

「まあ、彼はお友達なの? それとも、ボーイフレンド?」

「えっ……」

「ちげーよ!! 何言ってんだおねーさん!」

カルネさん、何故そんな突飛な発想を……。
絶句してしまった私の代わりに、すかさず陽が否定してくれたから良いのだが。
そんな私達の反応に、何か納得した様子のカルネさん。

「あらあら……。ごめんなさいね」

彼女は少し笑いながら、再びフィールドに目を落とす。
何だろう。何か言いたげな様子だったけれど…。

「モスト・インセクト・アーティスト! アーティ! キャンバスは、ここだあ!!」

司会者が熱意溢れる紹介を終えた頃には、フウロさんとアーティさん、二人のトレーナーが中央のバトルフィールドに出揃った。

「久しぶりね、アーティさん!」

「そうだねぇ。お久しぶり、フウロちゃん」

そんな二人の会話がマイクを通して会場内に響き渡る。
ポケモンへの指示が観客にも聞こえる様、対戦者は互いに小型のマイクを装着している様だ。
よく見ると、二人ともすでにモンスターボールを一つ手に持っている。
いよいよ始まるのだ、ポケモンバトルが。
レフェリーが、バトルフィールドに姿を現す。

「それでは、ポケモンワールドトーナメント、イッシュリーダーズ第一回戦っ! フウロVSアーティ!」

その声を合図に、二人がモンスターボールを放る。
一体、どんなポケモンを見ることが出来るのだろう。
どんなバトルを、観ることが出来るのだろう。
そんな期待と興奮が、私を湧き立たせる。

「始め!」

レフェリーの声が、アリーナの空間に鋭く響いた。
さぁ、ポケモンバトルの始まりだ。


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