夏に潜む影
56.ここホドモエから山と海を渡って南へ行くと、ポケウッドという映画撮影施設があるという。
正式名称は、ポケウッドムービースタジオ。
ここは映画産業の中心地と言われており、世界ではイッシュ地方の映画を指してポケウッドと呼ばれることもあるらしい。
「俺はそういう事に疎いんだが、彼女はそこへ行くらしいと聞いたぞ」
どうやらカルネさんは、ホドモエに少人数用のフェリーををチャーターしていたらしい。
一般的にホドモエからポケウッドへ行くには、一度ヒウンシティの連絡船に乗り、タチワキシティという町まで行かなくてはいけないらしい。
しかし、そこは流石スーパースターといったところか。
やること成すことが常人の考えでは及ばない。
「じゃあ、カルネさんは映画の撮影の為に、イッシュ地方へ……?」
「多分、そうなんだろうなぁ」
まさかPWTに来てるとはなぁ、と兵太さん。
確かに、あのPWTのスタッフの様子からして、カルネさんが来ることは知られていなかったのだろう。
それこそ、あれは本当にお忍びで来ていたのかも知れない。
……従業員には、すぐにばれていた様子だったが。
「フウロがな、この試合が終わったらポケウッドに行くんだと張り切ってんだ」
まぁ、明日明後日は久しぶりの休日だからなぁ。
そう言って、傍で眠るフウロさんを見つめる兵太さん。
その瞳は、困った様に笑っていた。
きっと貴重な休日を目一杯楽しませてやりたい気持ちと、少しでも身体を休ませてやりたい気持ちがせめぎ合っているのだろう。
「ふふ。ポケウッドに行ったら、きっと喜ぶでしょうね、フウロさん」
「そうだなぁ。ちょっとぐらいは、羽根を伸ばしてやってもいいかもな」
「はい。ぜひ、楽しんで来てくださいね」
「ああ、ありがとう。考えておくよ。……お嬢さんも、気を付けて旅を続けろよ」
ポケモンも人も、野生には要注意だぜ?
そう言って、兵太さんは私にウインクをした。
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