森の中で b

 G.

「……当初は、彼女等に彼の夢を食べて貰う予定でした。夢を食べ尽くしてしまえば、ピスカ殿も目覚めるだろう……。そう考えたのです」

「良いアイデアではありませんか。しかし、それは出来なかったのですか?」

「夢を食べること自体は可能でした。しかし……」

「しかし?」

「食べ尽くすことが出来なかったのです。正確には、止めどなく夢が溢れ出ている状態が延々と続く為、夢の終わりが見えなかったのです。何せ、ムンナ等にも食べる量に限界がありましたので……。それに……」

「……それに?」

「ムンナの食べた夢は煙となり排出され、幸せな夢だと桃色に変色するといいます。しかし、彼の夢を食べたムンナ殿の煙の色が……その……」

「……?」

「黒かったのです。真っ黒い、ドスの効いた煙だったのです」

「……黒い煙、ですか」

「はい。恐らく、酷い悪夢でも見ているのでしょう」

「ムンナ達に、悪い影響は無かったのですか?」

「ええ。幸い、ムンナ等には何も起こっていませんでした。ただ、やはり気持ちの良いものでは無いのでこれ以降は何も致しませんでした。今後、何らかの影響が出てきてからでは遅いので」

「そうでしたか……。まあ、良い判断ですね」

「そこで、ワタクシ達は別の提案をしました」

「それが夢の中へ入る……、ですか」

「その通りです。ムンナ達の出す煙の中には夢の内容に関する成分が含まれています。その煙を分析して使用できるよう調整し、我々の仲間が彼の夢の中へ侵入したのです」

「それはまあ……。一言でおっしゃるのは簡単でしょうが、随分と大変だったのではありませんか? 夢の中へ入る、とは」

「そうですね……。ムンナ達や仲間が持てる知識、知恵を出し合いました」

「そうでしたか……。それはご苦労様でした。そんな雲を掴む様な話、実現させるのも大変な苦労をしたでしょうに。他の者にも、そうお伝え下さい。……後で遣いの者に、褒美を贈らせましょう」

「そんな……。ありがとうございます。皆も、喜びます。……しかし、とても受け取れません。気持ちだけ、ありがたく頂戴致します」

「おや、良いのですよ。元よりこれは、かの王の失態から始まった事なのですから」

「いえ、そうはいきませぬ」

「……? 何故ですか?」

「それが夢の中に侵入したとはいえ、本当に入って夢の中の彼の姿を確認しただけなのでございます。夢の煙の量は限られておりますので、長時間居続ける事は出来ません。何より夢に入るという行為は未だ実験の段階でして……。その不完全な状態の為か、彼に接触する事も、呼び掛ける事さえも出来なかったのです」


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