夏に映る姿

 63.

「すぐに消えちゃうんだよな、シャボン玉。せっかくキレイなのに」

そう言って、陽はシャボン玉を作り続ける。
生まれてはすぐに消えて行くシャボン玉。
あるものは地面に落ちて消え、あるものは人やポケモンにぶつかって消え、またあるものは風に吹かれて消えていく。
作る手を休めれば、その数はどんどん減っていく。
シャボン玉に包まれた不思議な空間が、日の落ちかけた現実へと戻っていく。
だから、作る手を止められないと陽は言った。
もう、シャボン玉の液は残り少ない。

「あー……、なんかもう疲れてきたかも」

「最初からあんなに動いてシャボン玉を作ってたんだもの。仕方ないわ」

「うーん……」

今、陽はあの巨大な団扇を扇いでいない。
私の横で、同じストロー型のものでシャボン玉を膨らましている。
因みに陽のストローにはゴマゾウというポケモンがデザインされている。
中々に可愛らしいそれは、疲れ切っている陽にはとても不似合だった。
可笑しくて、つい笑ってしまう。

「ふふ、陽のそれ、可愛いわね」

「え、これか? ……だったら交換しようぜ。やっぱ恥ずかしいんだけど、俺」

「ふーん、絶対に嫌よ。それに陽、似合ってるもの」

「似合ってるって……、ウソ付け!」

「あははっ、いいじゃない。本当よ、本当。陽、凄く可愛いわよ」

「……」

「……? 陽?」

「……はぁ、もう。敵わねえなぁ」

「え?」

「いいよ、これで」

そう言って、またシャボン玉を膨らませ始める。
何よ、その諦めた感じは。
疑問に思ったが、訊くのも面倒くさいので私もシャボン玉へ息を送る。

私達の作ったシャボン玉はふわりと空へ飛び立っていき、一緒に夕空へと舞いあがっていく。
それは少し濃くなった天空まで上がること無く、宙でぶつかり合って、すぐに消えてしまった。


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