夏に映る姿

 66.

ずるり。

「なんか……すげぇ人だったな」

ずるり。

「ええ……。まあ、それだけ研究熱心な人なんでしょうね」

ずるり。

「そうだなぁ。それにしても、ねちっこい人だったなぁ」

ずるり。

「ねちっこいって……。今の貴方が言うと、何だか滑稽ね」

ずるり。

「え、そうかぁ?」

そう言って、陽は振り返った。
振り返る、とは言っても、もう陽のどこが頭で顔で身体なのか分からない。
陽曰く、今の彼の姿はベトベトンというポケモンらしい。
ダストダスと同じ悪臭の特性を持つというが、そのポケモンの姿は、もはや原型が何なのかすら分からない。

「ねちっこいというか、こう……、どろどろ、ね」

ずるり。

「えー。そこはべとべとって言えよー」

ずるり。

「何よそれ……」

ずるり。

「あ、もうすぐ出口だな」

ずるり。

「え、あら、本当……。意外と早かったわね」

ずるり。

「な! ベトベトンに感謝だな!」

陽がこちらを向いて、笑いながら言った。
……やはり、どこが顔なのか分からないが。

「あそこを抜ければ、フキヨセシティなのね」

フキヨセシティといえば、フウロさん達が住む街。
つい最近会ったようで、もうしばらく会っていないような気もする。
再び、彼女らと会えるかしら。
また、会えたらいいな。
そんな期待を抱きつつ、私達は光が差し込む出口へと、一歩踏み出した。


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