やさしい人たちに出会いました
3突然トリップしてきた人が1人。
強運に目をつけられて引きずり込まれた人が1人。
死んだ後の転生先がここだった人が1人。
年頃は似たようなものだが、この差は一体。
「豊富なバリエーション・・・」
「嬉しくないわよ!」
半眼で呻くようにつぶやいたラクに対し、ヒナが鋭い突っ込みをいれた。確かに。
コントのような2人を見て苦笑したミツキだったが、何やら複雑そうな顔をしている陽を見て首を傾げる。
とはいえそれは、次のヒナの発言で白紙になった。
「だけどまさか帰り方を探してる人がいるとは思わなかったわ・・・。ミツキちゃんごめんなさいね、私は割とすぐこっちの世界に情が移ってしまったの。それにラクはむしろ、これ以上の転生がなければそれでいいって言うし。だから今の私たちの目的は、いかに満足して天寿を全うするか、なのよねぇ」
なんか年よりじみているけど結構切実なの、と苦笑するヒナ。同じ場所から来ていても、旅の目的はそれぞれ全く違うようだ。
次第に顔色がましになってきたラクも、トレーナーの言葉にうなずきを返す。
「まさか必要になるとは思ってなくて、帰り方は全然探してないんだよな・・・」
「それどころか帰らない方法を探したいくらいよ」
真顔で答える2人に、ミツキと陽は顔を見合わせた。ミツキの願いとはずいぶんな違いだ。
純粋に疑問を覚え、彼らに素直に聞いてみる。
「ヒナちゃんたちには、家族とか大切な友達はいなかったの?」
これに対する返事は、非常にシンプルだった。
「いたけど、家族や友達は、私がいなくても生活していけるもの。だけどラクたちは、そうじゃないでしょ?」
「うん。それにわたし・・・じゃなかった、俺は、死んで来たから戻りようがないと思うなあ」
トレーナーに続き、けろりとした様子でヘビーな内容を語るラク。黙ってそれを見ていた陽だったが、どうしても聞き流せない部分が耳に引っかかった。
「ちょっと待てよ。今一人称おかしくなかったか?」
聞き間違いでなければ、「わたし」だったような。
問われたラクはといえば、大して気にしていない様子で「ばれたか」と舌をちょろり。
「いやー、昔の話してるとつい。もともと女の子として生まれ育ったもんだから」
今は男なんだけどな。
「・・・え?」
「へっ?」
何を言っているのか分からない、という顔になった2人。ラクとヒナは、やっぱそうなるよね、と遠い目になった。
「三つ子の魂百まで、とはよく言ったものよね」
「いつも同じくらいの年齢でリセットだから、精神成長した気がしないし」
「変なところで達観はしちゃってるけどね。とりあえず、やっぱりラクは根っこが女の子だと思うの。なんか可愛いし、ガールズトークもオッケーだし」
「うーん、それはまあ・・・やっぱ俺、男は向いてないのかなあ」
「向いてたら、むしろ嫌だわ・・・私が」
「ヒナちゃんがっ!?」
さも当然のように語られる、異常すぎる経歴。本人がけろりとしているのが、また凄い。しかも、やっぱり会話がコント風。
なんだか頭がいっぱいいっぱいになってきたミツキは、とりあえず会話の流れを変えることにした。
「そういえば、ラク、元気になったみたいね」
するとラクは、にっこり笑って壁越しに外を指さして。
「うん、雨が止んだから。俺さ、物凄く苦手なんだ、雨」
「え?でも、ゲンガーは確か・・・」
「いやー、そっちじゃなくて。トラウマの方な」
「・・・あ、ごめんね」
「ん?別に気にしないよ?これでもヒナたちのおかげで、だいぶ軽くなったんだし。まあ・・・土砂降りの中放置されたりしなければ、だけどさ」
さすがにそこまでは平気じゃないです。
その時、ラクのセリフを聞いたヒナがぽんと手を打った。
「ああ、そういえば遅いわね、みんな」
「あれ、もしかして忘れてた?ヒナちゃんマジで身内を忘れてた?」
大事なことなので、驚きも手伝って2回確認した。けれど返ってきた答えはなんというか・・・無情。
「うるさいわね、驚きの連続だったんだからしょうがないじゃない!悪い!?」
「え、あれ!?おかしいの俺!?」
正当な疑問に堂々と開き直るヒナはなかなかに自由人だ。それに対し、どちらかというと気遣い屋のラクは、あからさまにおろおろ。
不思議な状況にミツキはぽかんとするが、陽はその背後でけらけらと笑い転げていた。
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