第二章
15.***
「探検っ、探検っ!」
「たーんけんっ、たーんけんっ!」
「さっきのふかし芋、ケチャップたあぁっぷりで美味しかったねぇ〜! ボク、あれボウル一杯分ぺろっと食べられちゃうよぉ〜!」
「ほんとだよねぇー! とろーりばたーも、すっごくおいしかったー! みんなにもってかえってあげたかったなぁ〜」
「芋の姿は消せないから、すぐ人間にバレちゃうよぉ〜?」
「そうだねー、ざんねんっ!」
「残念っ!」
きゃはきゃはと小声になっていない小声で笑いながら会話をする、黎明と智秋。
原型になっている二匹が潜めた声は、普通の人間にはほとんど聞こえない。もし聞こえたら、それはよっぽどの霊感の持ち主である。
ただし姿も消さず、廊下を堂々と浮遊する彼等が見つかるかどうかは、いささか時間の問題であった。
「智秋、ストォォーップ!!」
「えっ、なになに!」
「しぃーっ!」
ある部屋の前で黎明は、ちょいちょい、とその部屋の小窓を突いた。
智秋へ部屋を見ろ、と言いたいらしい。
智秋がそれに従うと、そこには三、四人の男が中に入っているのが分かった。中は案外広いらしく、部屋をいくつかのカーテンで区切っている様だった。
そのカーテンの隙間からはちらっと、簡素な二段ベッドが見えた。どうやら船員が寝泊まりする部屋らしい。
「寝てる人間が居たら、ちょおぉぉっと脅かしてやろおよぉ〜」
「わ、なにそれ! たのしそう!」
きらきらと笑顔で返答する智秋を見て、黎明はニタァ、と満面の笑みを浮かべた。
反論する者はこの場に居ないらしい。
「それじゃ出発うぅ! って、へぶ!?」
勢いよく部屋に入ろうとしたのもつかの間、黎明は突然開いたドアに顔面を直撃させた。
ドアから出てきたのは先程まで部屋に入っていた船員達だった。
「ん? 何かぶつかった様な……?」
「何言ってんだ馬鹿。早く行くぞ」
「お、おう……?」
そう話す船員達の出で立ちは何故か、先刻まで見掛けていた制服と、色も形も大きく違っていたのだが…………。
しかしあまりにも衝撃的な出来事に、黎明、そして智秋も、そんなことには全く気付かなかった。
ただただ黎明がその場で怒り狂い、智秋が必死でそれを抑えようとしているだけだった。
「あははははは。ボクねえ〜っ、痛いことされたら、もおおおっと痛ぁいことでお返ししたくなっちゃうんだあ〜〜〜っ! あいつの顔、削ぎ落としちゃおっかなああああああっ!?」
「れいめいくんっ、にんげんのおかおをそいだら、さすがにばれちゃうよ!!」
よく分からない理由を並べては、必至で説得する智秋。
そんな中ふと、智秋にある策が思い浮かんだ。
「そうだ、れいめいくん!」
「なあに智秋ぃ〜? そろそろ放してくれないとボク、智秋の手も切り刻んじゃうよお?」
「それよりれいめいくん、あいつらのふく、ぬすんじゃおうよ!」
「ええ?」
よく分からない、といった風に訊き返す黎明。
そんな黎明に、智秋はうきうきしながら自らの名案を述べた。
「あいつらのふくをきて、おふねのなかをたんけんしよう! そしたらぜんっぜんあやしくないし、こそこそしなくていいんだよ? あいつらに、もっとおもしろいいたずらもできちゃう! うまくやれば、おねえちゃんたちにも、あえるかもしれないよ!」
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