12.

……正直、あまり立派な虹ではありません。
その虹を見て、綺麗ですね、小さいですね、可愛いですね、とはしゃいでいる彼女。
僕からすれば、綺麗で小さくて可愛いのは貴女の方ですが。

そう思いつつ、彼女の横に並びます。
あんな虹で喜ぶなんて。
虹なんて、コツさえ分かればいくらでも見れるのに。
僕、虹に負けた気分です。

……こつん。

不意に、手に何か、心地いい感触がありました。

「あっ」

「……」

急いで、自分の片手を引っ込める彼女。
どうやら、彼女の手と僕の手が触れてしまったようです。
さっきまで傘を差して密着していたので、距離感が掴めなくなっていました。
傘を持っていない右手が、彼女の左手に。
僕も一瞬、ドキッとしてしまいました。
……しかし、そんなに拒否しなくても。

「えっ、あ、ご、ごめんなさい」

「……いえ、気になさらないでください」

凄く落ち込んでるんですが、頑張って隠します。
はあ、ちょっとでもラッキーだと思った一瞬前の自分が羨ましいです。
彼女のお顔の火照りが、耳まで広がっています。
うつむいてもじもじしていますが、そんなに嫌だったんですかね。
はあ、僕、ショックです。

それにしても彼女、急いで帰宅したかったのではなかったでしょうか。
訊いてみましょう。

「あの、今から急いで家へ帰らなければならなかったのでは?」

「ああっ! そうでした!」

何かから解き放たれたかのように、ぴょんっと跳ね上がる彼女。
ありがとうございました!と、彼女はぺこりとお辞儀をして、あっという間に去っていきました。


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