3:願う前に忘れてしまいましたとさ


腕の中で銀髪の赤子をあやせば嬉しそうにきゃっきゃと笑った。小さくもないが大きくもない、家族で暮らすにはちょうどいい家には穏やかな時間が流れていた。

「宇髄さんの子供とは思えないくらい可愛い……きっとお母さんに似たんですねぇ」
「よし、お前はド派手にしばく」
「赤ちゃんに口悪いのが移っちゃいますから、宇髄さんはしーっですからね」

親と、その元部下がどんな会話をしているかも知らず子供は未だ笑顔を絶やさない。

放浪の旅の末に知り合いを訪ね始めてはみた訳であるが人付き合いが苦手な自分にしては割と知人を作れていたんだなと実感した。

がらがら、と扉が開く音がしたので赤ちゃんを泣かさない程度に急いで玄関先に向かう。

「赤ちゃんを預かってもらってありがとう。遊びに来たのにごめんなさいね」
「私は大丈夫です!子供は好きですから!二人くらい軽いもんですよ」

紙の袋を両手いっぱいに抱えた3人は、朝に私が訪れた時よりスッキリした顔をしていた。

「もう少しゆっくりしてても良かったんですよ?お母さんは休めないんですからせっかくの休日ですし今からでも……」
「いいの。天元様と赤ちゃんが恋しくてすぐ寂しくなっちゃうから」

くっ。圧倒的なリア充パワーに炙り殺されそうだ。そんな笑顔を見せられればもう何も言えない。少し軽くなった腕は寂しいけど、この家族の邪魔をするわけにもいかないしそろそろお暇しようか。

その旨を宇髄ファミリーに告げれば、せめて晩ご飯だけでも、と止められたが流石に遠慮くらいは憶えている。まとめる荷物も少ないので赤ちゃんに別れを言って、

「あ、1つ聞きたいんですけど」

「富岡さんがどこにいるか知ってますか?」



どこか懐かしい味のお茶をすする。兄弟子にたかった茶と団子の味は格別だ。

「まさか富岡さんと落ち着いてお茶できるとは思いませんでした。修行時代以降だから……下手したら10年ぶりとかかもしれませんね」
「俺は百足寺といると落ち着かない」
「あって早々にひどいですね〜」

強い既視感を覚えるやりとりを繰り返す。しかしここ数年はなにをしてもそう感じていたから特別なにかを考えることはなかった。

「」

「景信山に、ある」
「お墓が……ですか?」
「」

「そうだった。私、知ってたのに」


涙が溢れて弾ける。


夢の中でも彼は死んでいた。どうして忘れていたんだろう。後悔で埋め尽くされた心の中をひっくり返すことはできなかった。

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