「痛い!!」
叫んだ言葉は霧に吸収された。曇った視界にも見覚えがある。何年振り、いや何十年振りにに見たかも分からない狭霧山。
短かった修行時代を過ごした地に横たわっている。
大の字になって寝ている私の片手には刀が握られている。ひどい刃こぼれをしている上に、途中で2つに折れてしまっている。少し離れた場所に折れた先が落ちていた。
ゆっくり立ち上がればふらつくが、折れた刀を支えにして何とか立ち上がる。
今までのパターンで予想される可能性が頭に過ぎる。それを確かめるため周りを見渡せば、可愛い女の子が真横に立っていた。
この子は……、ダメだ。どれだけ思い出しても、彼女を見た記憶はない。
ひどく驚いた顔は、富岡さんにも似ている。というかこの子、もしかして。
いや、そんなことは私にはわからない。幽霊を信じない派なのは今まで見たことがないからだし。
「君は、えっと」
鱗滝さんがつけているお面によく似たものを顔からずらしてつけている彼女はすぐににこやかな笑顔をこちらに向けた。
「私は真菰だよ。よろしくね」
「百足寺なづみといいます。よろしくお願いします」
真菰さんと握手を交わす。
「真菰さんは私と同じ鱗滝さんの弟子ですか?」
「そうだよ。ずっと君のことを見てたんだ」
それにしては私は真菰さんのことを見たことはなかった。それに、修行するにしては刀も握っていないし戦闘
「私は、今までなにをしていたのでしょうか」
「……それは、自分で答えを出さなきゃダメなことだから教えられない」
真菰さんはそっと瞼を伏せて、黙り込む。それからしばらく真菰さんが動くのを待つが、彼女は石のように固まったままだ。
ゆっくりと時間をかけて、今の状況を考え続ける。
霧が濃いってことは、山のかなり深いところまで入り込んでるってことだ。
それに加えて、身体中が痛い。夢の中で鬼に貫かれた腹が、意識のせいで痛むのではなく本当に痛いのだ。筋肉痛の痛み、骨の軋み、血液は循環で温まり、それが熱を持って頭痛に繋がる。
それにこの、折れた刀。
「そっか」
確か私はここで諦めてしまったんだ。刀が折れてしまったのと同時に心も折れて、私は時間が切れるまで泣くことしかできなかった。
それから、鱗滝さんに隠しになる道もあると教えられた。
これはあの日だ。私が隊士になることを諦めて、ぽっきりと心が折れ切って修復不可能になってしまったあの日。
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どうして彼女にいきなり自分の姿が見えるようになったのだろうか。
ただ、目覚める前の少女と目覚めた後の彼女では、なにかが違っていた。雰囲気が自分の纏っているものに近くなった。
厭世的でありながら、心の奥底には愛する誰かを抱え込んで離さずにいる。
有限を、無限に生きている。
「きっといろんなものを見てきたんだね」
少年は言った。
『あいつは強くなれない。なぜなら心が強くないからだ』
「初めから強い人なんてきっといないんだよ、錆兎」
果たして、霧に消えた一言は少年に届いただろうか。
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「まさかここに来ることになるとはなぁ」
最終選抜に参加する面々は誰もが
私のようになんの覚悟もなくのほほんとした気持ち、間抜けな顔で最終選抜に参加していることがおかしいのだ。
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