かわいそうな花を愛で
ニコさんに言われたことはずっと頭の端にあった。私は運良く助けられたんじゃない、喰べる時まで置いているだけの食料なんじゃないか。
どっちかと言えば後者の方がありえる。
でも、私はそんな考えを持ちながらもウタさんの側から離れられなかった。
ウタさんが作業台で先ほどから困っている。マスクの案が上手く出てこないらしい。
「大変そうだね」
「うーん……」
スケッチブックと睨めっこして、少し描いては消している。
「ねぇ、ユヅキさんココどうしたら良いと思う?」
ウタさんからスケッチブックを渡されてしばらく見つめる。私は机にあった鉛筆を取って線を足していく。なんとなく、頭に浮かんだモノを描いてウタさんに見せた。
「……へぇ」
「あ、ごめんなさい!描いちゃった…」
ウタさんは「良いね」と言ってくれた。
「ユヅキさんも絵描くの?」
「……!」
「絵心あるから」とウタさんは言う。
絵は好きだった。絵の勉強をしてみたいと思ったこともあった。だけど、親は私の意見は眼中に無かったために自然と諦めてしまったのだ。
「そうなんだ」
「だからウタさんのお仕事、ちょっと羨ましい」
そう言ったらウタさんは、好きに描いたら良いとスケッチブックを1冊くれた。
「ユヅキさんの絵、もっと見てみたいな」
――優しかった。
――彼は何でこんな優しいんだろう。
スケッチブックを抱き締める。
ダメだ、私はただの食料でしかない。
私は所詮は人間なんだ。
好きになってしまったらどうすればいいの。
To be continued…
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