どれくらい意識を飛ばしてたのか分からねぇ。目を覚ますと公園にいた。そして隣には何故かなまえさんがいた。どうゆう状況か理解できていないけど、顔面が痛すぎて口を動かす事ができない。なまえさんにこんなボコボコになった顔見せたくなかったなと、のんきにそう思った。
「千冬くんっ!大丈夫…じゃないよね」
今にも泣き出しそうななまえさんが、俺の顔を見てさらに目を潤わせた。
「圭ちゃんが本当にごめんね…っ。痛いよね…」
謝りながら俺の頬に優しく手を添えた。俺はなまえさんに安心して欲しくて、口の中が切れててかなり痛いけど頑張って口を開いた。
「なまえさんに泣かれる方が何倍もキツイっす」
思ったより口が開かなくて聞き取りにくいであろう俺の言葉がどのくらい届いていたか分からない。それでも安心して欲しくて、なまえさんの手に俺の手を重ねた。
なまえさんに俺の言葉が届いたのか、目を細めて安心したような表情をしていた。
「なんでなまえさんがここにいるんすか?」
「一虎に芭流覇羅のアジトに連れて行かれたの。タケミっちくん囮にされたから従って行ったら…」
細々とした声で一先ず1番聞きたい事を聞いたら、なまえさんが芭流覇羅のアジトに行った?あんな危ねえところに来たと聞いて普段の俺ならなまえさんに怒っていただろう。でも今はそこまで喋れる元気がない。
一虎くんは場地さんに話を聞いた事がある。年少に入ってる事くらいしか知らねーけど。一虎くんは何がしたくてなまえさんを連れて来たのか分からねえ。しかも場地さんが最も巻き込みたくない人だ。場地さんはなまえさんが芭流覇羅のアジトに連れて来られてどうしたんだ?聞きたいことはたくさんあるのに全然聞けなくてもどかしい。
「俺が心配で可笑しくなるからこれからはそんな場所に行かないで」
聞きたい事よりも俺は伝えたい事を優先した。場地さんに殴られた事もキツイけど、なまえさんがあんな場所に居た事実の方が普通に嫌だった。
「…うん、分かった。一虎は前から知ってる人だったから着いていっちゃったの。でもよく考えれば軽率な行動だったね」
「俺も嫌っすけど、きっと場地さんも嫌だと思います」
「圭ちゃんにもさっさと帰れって怒られた」
やっぱり場地さんも怒ってたんだと思うと、場地さんは変わってねえなって安心した。あれだけボコボコにされたけど、でもやっぱりあの行動は芭流覇羅に入るためのものと考えると納得いく。場地さんがマイキーくん、東卍の敵になるなんてやっぱり有り得ねえ。俺はずっと場地さんを信じてる。
「千冬くん、送るから帰ろうか。迎え誰かに頼む?私でよければ肩貸すけど」
「場地さんわざとなのか顔面ばっかり殴ってたんで思ったより体は平気っす」
「そっか、じゃあ帰ろうか」
「ウッス。送ります」
「お気遣いありがとう。でも今日だけは送られてよ」
なまえさんは折れる気が無さそうだったから今日が最初で最後で送ってもらうことにした。
「本当に今日だけっすよ」
「千冬くんが怪我しなかったらね」
「それはどうかなぁ」
「努力はしてよ〜?千冬くんがボロボロになってたら心配で私可笑しくなっちゃう」
俺がさっきなまえさんに言ったことを返してくれた。まさかの言葉に俺は驚いて足を止め、なまえさんを見つめた。俺の心臓がギュッと掴まれたような感覚がした。
「私だって千冬くんの事心配してるんだからね」
「…なまえさんそれはズリィっすよ」
なまえさんには好きが増してくばかりで本当に困っちまう。アンタの気持ちも視線も声も全部、俺だけに向けてくんねぇかなと欲張りな感情が爆発しそうだった。
「なまえさん、手繋いでもいいっすか」
なまえさんは少しだけ間を持ってから「うん、いいよ」と答えてくれた。
俺はなまえさんの承諾の言葉を聞いてから手に触れた。俺よりも少し小さいなまえさんとは手を繋ぎやすい高さだった。俺が緊張しすぎて体温が高くなってる所為か、なまえさんの手がひんやりと感じた。細く白く触り心地の良い肌に初めて触れた感覚は、俺の気持ちを昂ぶらせるのに十分だった。
「なまえさんの事守るって言ったのにこんなんですいません。マジで情けねえ」
「そんな事ないよ。千冬くんは圭ちゃんの為に体張ったんでしょ?それに私は怪我してないし」
「怪我してるとかの問題じゃねぇ。なまえさんは危険な場所に居たんだ。守って当たり前っすよ」
なまえさんは結果良ければ全て良しと思っているようだったけど、今回はたまたま怪我しなかっただけ。芭流覇羅だって立派な不良チームだ。
「なまえさんはもっと危機感持ってください。それとも一生俺に心配させたいんすか」
「心配させたいわけじゃないけど…守っては欲しいかな」
なまえさんは分かってねえのか計算なのか、そんな言葉を貰ったら男は誰だって勘違いする。
「アンタも悪いっすね」
そう言うとなまえさんは人並外れた綺麗な顔でにこりと笑った。
「千冬くんにしか言ってないよ」