10月31日 血のハロウィンと呼ばれるようになるこの日に、場地さんは亡くなった。
前日にタケミっちと場地さんに会いに行ったけど、場地さんには敵だと突き放された。
「なまえさんも心配してますよ」
「んな事してる暇あったら勉強しとけって伝えとけ」
本当はなまえさんの事気になってるはずなのに、場地さんは頑なに1人になろうとする。俺も力になりたいのに、場地さんはそれを許そうとしない。
当日、場地さんはやっぱり稀咲を潰すために1人で戦っていた。俺とタケミっちも場地さんの力になろうとしたけど、最後まで場地さんはそれを拒んだ。
そして、抗争中に場地さんは一虎に刺された。それは致命傷ではなかったけど、でも場地さんが死んだキッカケはその傷だ。もちろんマイキーくんも怒り狂って一虎を殺しかけた。一虎はマイキーくんの大事な物を壊したかったと言う。
誰も止められない状況を救ったのが相棒だった。アイツの言葉で更に悪化するはずだった現状に終止符が打たれた。と、思ったが場地さんは最後の力で自決してしまった。場地さんは一虎に負い目を感じて欲しくなかったからと言うが、俺はそれでも一虎を許せる気がしなかった。
場地さんは最後に「なまえを頼んだ」と俺に言った。何だかんだ場地さんはなまえさんの事最後の最後に思い出す程大切にしていた。
こうして俺の最も憧れの人を失って、血のハロウィンに幕が降りた。
場地さんが亡くなって数日経つ。俺は今だに立ち直れておらず途方も無く歩いている。これからどうすればいいかわかんねぇ。俺が壱番隊隊長になんのか?いや、俺には荷が重すぎる。場地さんがいたからみんな着いてきたし俺も東卍に入った。それがそんな存在になれる自信がない。
今は何も考えたくなくて、俺は公園でボーッとしてたいた。ふと、なまえさんを思い出した。なまえさんは場地さんの訃報を聞いたのだろうか。大丈夫かな。なまえさんも幼馴染を亡くしたら正常にはいれないだろう。
なまえさんに会いに行こうとなまえさん宅に向かうと、玄関で誰かと話しているようだった。玄関が見えるところまで行くと見覚えのあるシルバーパープルの髪色が見えた。なまえさんの顔を見ると、恐らく場地さんの話を聞いたんだろう。
俺はどうしようかと迷ったが、三ツ谷くんが帰るまで待っている事にした。
少し話をしているようだけど、内容までは明確に聞こえて来ない。三ツ谷くんと並んでる姿を見ると美男美女でお似合いだと弱気なことを思ってしまった。
そう考えていると三ツ谷くんはなまえさんを抱きしめていた。
「お前の事、俺が隣で支えたい。弱ってるなまえを放っておけねぇよ」
さっきまで会話はぼんやりとしか聞こえなかったのに、今の言葉だけは何故か鮮明に聞こえた。
その後の展開を見たく無くて俺はその場を離れてしまった。なまえさんが心細い時になまえさんの前に現れたのは俺じゃ無くて三ツ谷くんだ。そんなん勝てっこねぇだろ。
場地さんの事もあって俺は自暴自棄になりかけていた。何でこんな嫌なことばっかり。
俺はコンビニでペヤングを買い場地さんのお墓に向かった。半分だけ食べて俺は場地さんの墓の前に座る。そうすると何故か勝手に涙が溢れてきた。何もかも嫌でこれからどうすればいいのか分からなくなって涙が止まらない。その時隣に誰かが来た。フッと視線を上げるとそこにはマイキーくんがいた。マイキーくんはスッと手を合わせ目を瞑った。
「俺東卍辞めようと思ってます」
マイキーくんは俺を見つめるが何も言わなかった。
「今までありがとうございました」
「壱番隊の灯火を、お前が消すのか」
まさか総長にそう言われて止められると思いもしなかった。壱番隊は場地さんが大切に残していった宝物だ。それを副隊長の俺が消してしまう、その事実も確かに否めなかった。
「でも、俺が壱番隊を引っ張って行くのは荷が重すぎます」
「今すぐに答えを出さなくてもいい。こーゆう時くらい俺の事も頼れ」
その後はマイキーくんと何度も何度も話し合って、俺たちは一つの答えに辿り着いた。
「
1人で悩んで落ちるところまで落ちていたが、やっと俺は少しだけ前に進んだ。
次の日、また場地さんのお墓に行き壱番隊隊長の事を報告した。
「場地さん、壱番隊はタケミっちに託すことになりました。俺はこれが1番って思ってます。場地さんもこれを望んでたんじゃねーかなって」
誰もいない墓地に俺の声は響いて聞こえた。
「場地さん、これでよかったんすよね」
空を見上げて言うと、場地さんの笑った声が聞こえてきたように感じた。
「千冬くん」
俺はバッと後ろを振り返った。そこにはお墓に供えるための花を抱えたなまえさんが立っていた。最後に見た時よりも心なしか痩せたように思えた。
「なまえさん…。元気でしたか?」
「元気…だったかな。千冬くんは大丈夫?」
「俺は少し立ち直れた気がします」
なまえさんは前ほどの活気ある雰囲気はなく、まだ受け入れられていないような気がした。
「そっか。それならよかった。圭ちゃんの後はタケミっちくんが隊長になったんだね」
「はい。総長と話して決めました」
なまえさんはお墓の掃除や花を供えながら話してくれた。最後にお線香に火をつけ、しばらく無言で手を合わせていた。
「圭ちゃんとまともに楽しく話したの、夏の終わりあたりが最後だった」
なまえさんの頬には涙が流れていた。
「夏休み明けあたりから話し掛けても素っ気なくて、終いには無視されてさ。わたし何かしたのかなーって思ってたけど、圭ちゃんの事だから時間が経てばいつもみたいに戻るかなって思ってた」
場地さんは恐らく、なまえさんを危険な目に遭わせたくなくて早くから対策してたんじゃねーかなと思う。稀咲に目を付けられたら大変なことになるし、芭流覇羅の連中に知られると危険と分かっててやった行動だとすぐに察した。
「わたしが芭流覇羅のアジトに連れて行かれた時も、凄く怖い目で『もう俺の視界に入るな』って怒られて。酷くない?」
「それは酷いっすね」
なまえさんは目に涙を溜めて少し笑いながら話していた。でもその後すぐに沈痛な表情に変わった。
「こんな事になるなら無理矢理にでも圭ちゃんと話せば良かった…っ。もう一生話せなくなるなんて思わないよ…っ。なんで…っ!」
「なまえさん!すいません…。俺が、俺がもっと強くて俺がちゃんと場地さんの隣にいれば…っ!」
なまえさんがこんなに感情を剥き出したのは初めてだった。なまえさんは俺達の世界の人じゃない。俺達の事情を知らない。また会えると思っていた人の突然の訃報を受け止めろと言う方が無理に決まっている。
「千冬くん…っ、苦しいよ…っ!」
「なまえさん…」
彼女の涙を見て俺は、俺らはなまえさんの大切なものを奪ってしまった罪悪感に苛まれた。