場地さんから昨日、急遽集会をすると連絡があった。
学校から帰ってから急いで準備をして、場地さんと武蔵神社へ向かう。すでに半分以上は揃っていて、神社内はイカつい男達で溢れていた。
以前に比べてみょうじ先輩は、東卍の集会に顔出しに来る事が増えた。ほとんどが三ツ谷くんのバイクで来るけど、たまにマイキーくんや場地さんと一緒の時もある。俺は集会の度に、みょうじ先輩の有無を目で探してしまう。
明らかに人を探す行動とみょうじ先輩がいる日の俺の微妙な変化で、場地さんには俺の気持ちがバレていた。俺よりもずっと前から好きだった三ツ谷くんの気持ちを場地さんは知ってて、それを口にしたら「好きって気持ちに前も後ろもあんのかよ。三ツ谷に遠慮する必要なんてねぇだろ。本気で好きならお前も行動しろ」と最高にかっこいい後押しをしてくれた。
そして、今日の集会はマイキーくんの客とその
「ん?お前もしかしてタケミっち?」
「は⋯はい」
「総長の客何脅かしてんだよ」
「スイマセン!!」
三ツ谷くんのひと声でタケミっちとやらは助かっていた。
「タケミっちくんごめんね。いきなりビックリしたよね」
「あっ、えっ、あっ、はい…!?」
三ツ谷くんの後ろからみょうじ先輩がひょっこり出てきて、タケミっちって奴に話しかけていた。みょうじ先輩今日来てたんだ。毛先を緩く巻いて低めのポニーテールのみょうじ先輩は、群を抜いて可愛い。この場はヤローしかいないけど。っつーか、このタケミっちって奴は彼女がいるのに何みょうじ先輩を見つめてるんだよ。
「なまえ、マイキーのところにいろって言っただろ」
「可愛い女の子いたから来ちゃった」
「はいはい。タケミっち、とりあえずこっちついてこい」
三ツ谷くん達がマイキーくんの方に向かって行く時にみょうじ先輩と目が合った。
「(千冬くん)」
みょうじ先輩は声に出さずに俺の名前を口にして、少し微笑みながら手を振ってくれた。
咄嗟に手を挙げてお辞儀するという奇行に走ってしまったが、心臓はドキドキと激しく動き、全身が熱くなった。
学校の後輩ってのもあって、東卍の中でも贔屓されてる自覚はある。でもそれは、ただの後輩として。だから、俺は決心した。
集会が終わり一部幹部とみょうじ先輩、エマちゃんで集まっていたが、それもまばらに帰り出した頃に、俺は三ツ谷くんに話しかけた。
「三ツ谷くん、すみません。少しだけいいっすか」
「全然いいけど…珍しいな、千冬が俺に。アッチ行くか?」
「はい。すぐ終わるんで」
場地さんが少し微笑んでいるのと、みょうじ先輩が不思議そうにこちらを見つめているのが一瞬だけ目に映った。ついでに、後ろから「裁縫の相談か?」とトンチンカンな推測をするマイキーくんの声が聞こえてきた。
「この辺りでいいか?」
「ウッス。すみません、急に」
「いや、全然いいけど。どうした?」
何かの相談かと思っているのか、三ツ谷くんが心配そうな顔をして俺を見ている。
「三ツ谷くんがみょうじ先輩を好きって話してくれましたけど、すみません。俺もみょうじ先輩が好きっす」
「…は?」
「三ツ谷くんは男の俺から見てもカッケーし、つえーし、優しくて頼りになる人だから、正直全然自信はないっすけど、だからこそ俺、三ツ谷くんに負けたくないっす」
三ツ谷くんは言葉を発さず、真顔で俺を見つめている。
「今までは俺の気持ち隠して三ツ谷くんに遠慮してましたけど、これからは俺もみょうじ先輩に見てもらえるようにいかせてもらいます」
三ツ谷くんは表情を変えずに俺を見ている。心情が読み取れず、俺まで言葉を無くしてしまった。
すると三ツ谷くんは「…プッ」と吐き出すように笑った。
「な、なんすか?」
「いや、千冬からライバル宣言を堂々とされるとはと思って」
「いや、だ、だって…」
「遠慮なんていらねーよ。俺も千冬には負けたくねーから本気でいくけど。でも最終的に選ぶのはなまえだ」
三ツ谷くんはみょうじ先輩の話をする時、いつもどこか愛おしそうな顔をして話をする。
「気遣わせて悪かったな。言いづらかったろ?話してくれてありがとな」
「いや、俺が勝手に遠慮しちゃっただけなんで…」
「一つだけ約束してくれねぇか?」
静かな空間に俺たちだけの声が響く。
「なにがあってもなまえを泣かさねぇって事、約束して欲しい。俺はアイツにずっと笑ってて欲しくて」
「…はい。俺も一緒っす」
「だよな。それなら良かったわ」
三ツ谷くんの「じゃあそろそろ戻るか」の声で俺らはみんなの元へ戻った。
戻るとそこにはマイキーくん、ドラケンくん、エマちゃん、場地さん、みょうじ先輩だけが残っていた。何の話をしていたかなんて知らないみょうじ先輩は、「千冬くんがタカちゃんシメてたの?」なんて冗談をニコニコと言っていた。
その後、いつも通りに三ツ谷くんがみょうじ先輩に声を掛けて、2人でバイクに乗って帰って行った。やっぱり三ツ谷くんにはまだまだ負けてると思い知った夜だった。