三ツ谷くんに宣言してから、俺はみょうじ先輩に積極的に話しかけるようになった。登下校時や移動教室で見かけたらみょうじ先輩が気付いていなくても俺から話しかけたり、みょうじ先輩の視界に少しでも入るように行動するようになった。そんなある日。

「みょうじ先輩!おはようございます」
「お!千冬くん、おはよ。圭ちゃんはまた寝坊?」
「途中まで一緒だったんスけど、忘れ物して取りに帰りました」
「相変わらずお間抜けだね」
「カッケーっすけどね!」
「千冬くんも相変わらずだね」

少しづつ軽口を言えるようになって、みょうじ先輩のいつもの友達からも「あ、千冬だ」「千冬頑張れ!」と何故か呼び捨てで呼ばれるまで昇格した。恐らく俺がみょうじ先輩の事が好きなのも、このお友達軍団にはバレているのだろう。現に今も「先行ってるねー」と言ってみょうじ先輩を置き去りにしてくれた。みょうじ先輩も「え、置いていかれた…まぁ、いいけど」と笑いながら俺に視線を向けてくれた。

「あ、千冬くんに聞きたかったんだけどさ」
「どうしたんすか?」

みょうじ先輩が目をキラキラさせながら話をし始めてくれた。

「屋上は不良の人しかいないって聞いたことあるんだけど行ったことある?本当に不良しかいないの?」
「あー、たまに行きますよ」

確かに屋上は学校の中でもちょっとヤンチャな奴がサボったりはしてるけど、休み時間は案外人がいない事が多い。『不良が集ってる』という噂もあって、普通の生徒はなかなか来にくい場所らしい。

「案外休み時間は誰もいなくてのんびりできるんすよ。今の時期だと風が気持ち良くて結構オススメっス」
「そうなの?へぇ、いいな〜」
「もしみょうじ先輩がよければ、明日の昼休み屋上行きます?」

今までは廊下ですれ違う時に話したり、下駄箱で顔合わせた時に話したりしかしてこなかった俺が、サラッと誘った事に驚いたのか、みょうじ先輩は少しだけ目を見開いた。

「えっ、いいの?」
「はい。みょうじ先輩の事もっと知りたくて」
「…へ?」

遠回しに「みょうじ先輩に気がある」という意味合いの言葉を投げかけてみたら、思いの外伝わったのか素っ頓狂な声を出したみょうじ先輩。

「俺にもっとみょうじ先輩の事教えてくれませんか?」

少し顔を赤くしたみょうじ先輩は、小さな声で「…はい」と答えてくれた。今までは世間話や挨拶程度の事しか話していなかったからか、今の行動で少しは気持ちが伝わったようだった。みょうじ先輩の戸惑う顔を見て俺は、『もっと意識してほしい』『もっともっと俺を考えてほしい』『俺でドキドキしてほしい』『俺が今までみょうじ先輩に対して思った事を、みょうじ先輩が俺にしてほしい』と過剰な程の欲が沸いてきた。

自分がこんなにも独占欲が強い事に驚きつつ、少し恐怖さえも感じた。まだ付き合ってもない、なんなら2人きりで話す機会ができただけでこの有り様。今後大丈夫か?と自分が不安になった。いつの間にこんなにもみょうじ先輩への気持ちが大きくなっていた事に、俺は気付いていなかった。

三ツ谷くんのような『いつでも笑っていて欲しい』という考えもあるが、それよりも『俺の事でいっぱいになって欲しい』という気持ちの方が強く、俺はまだまだガキ思考なんだろうなと思った。

あなたの事を





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