次の日の昼休み、先に屋上についた俺は誰もいない事を確認してベストポジションを陣取った。少ししてから控えめに扉が開き、みょうじ先輩がゆっくりと屋上に足を踏み入れた。

「…本当に誰もいないんだ」
「そうなんすよ。風も気持ち良いし穴場でしょ?」
「うん、圭ちゃんとかもいないんだね」
「今日はいないんすけど、屋上来る時は場地さんといる事が多いっすよ。昼寝したり」

場地さんには昨日、みょうじ先輩を昼休みに誘った事を伝えていた。場地さんは「俺は明日体育館裏行くわ」と気を利かせてくれた。

「風気持ち良いね」
「でしょ?みょうじ先輩もたまに来てくださいよ」
「せっかく教えてもらったし、また来るよ」

風が靡くミルクティーベージュの髪の毛がとても綺麗で、見入ってしまった。みょうじ先輩がふとこちらへ視線を向けてきたため、バッチリと目が合った。

「千冬くんってさ」
「は、はい!」

見つめていた事がバレたのかと思って、変な声で返事をしてしまった。

「猫ちゃん飼ってるんだってね!」
「あ、はい。そうっすけど、場地さんから聞いたんすか?」
「そうそう!わたし猫ちゃん大好きでさ。写真とかないの?」
「ありますよ。見ます?」

みょうじ先輩の大きな瞳がキラキラと輝かせながら、「見せて見せて!」と楽しそうに声を上げた。

ペケJの写真を見せると頬を緩ませながら「可愛い〜」「ナデナデしたい〜」「モフりたい〜」とペケに負けず劣らず可愛いみょうじ先輩を見る事ができた。

「もしよかったらウチ来て撫でてあげてくださいよ」
「え!ほんと!ペケちゃん撫でていいの!」

家に誘っても嫌がられねぇかなと思ったけど、そこは場地さんの腹心というポジションのお陰かすんなり受け止めてくれた。

「俺は全然。みょうじ先輩って彼氏とかいないんすか?」
「彼氏?いないけど…」
「あ、いや、彼氏とかいたら男の家はマズイかなって思って」

脈絡なく彼氏の事を聞いちまったけど、でもみょうじ先輩に彼氏がいない事はこれで確実になった。

「そうゆう千冬くんは?かっこいいし彼女とかいないの?」
「いやっ!そ、そんな!いないっす!」

みょうじ先輩からの『かっこいい』がかなり響いたため、アワアワしながら答えちまって嘘をついてるような感じになった。

「そんな慌てなくても大丈夫だよ」
「いや、ほんと違うんすよ!」
「あ、わかった。可愛い子に言い寄られてるとか?」
「それこそないっすよ。こんな不良に言い寄る女子なんて」

笑いながらそう答えると、みょうじ先輩は「不良でも良い子なんてたくさんいるのにねー」と返してくれた。褒めてくれているはずなのに、みょうじ先輩の返答は明らかに後輩に向けて話しているようだった。みょうじ先輩が俺の事をただの後輩としか見ていないのは明白だった。

ちゃんとした恋愛が初めてなうえに、年上の女の人がどうやったら意識してくれるのかなんて分からなくて、俺の小さい脳みそで考えた。

「じゃあ俺がみょうじ先輩に言い寄ってもいいっすか?」
「…え?」
「俺、誰にでも昼休み誘ったり、家に誘ったりなんてしないっすよ」

俺がこんなにも攻めてくるなんて思ってなかったのか、みょうじ先輩は目を大きく見開いた。

「俺、結構一途なんでよろしくお願いしますね。なまえさん」

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