俺が思い切ったあの日から、なまえさんは少なからず意識してくれているのか、話しかけてくれる時少しだけ恥ずかしそうにしてる。あの人は俺の心を鷲掴みにする天才か?可愛すぎんだろ。

そして大きく進展したこと、それは。

「なまえさん、今日の放課後昇降口で待ってますね」
「うん、わかった。終わったらすぐに行くね」

今日、俺の家に来る事になった。ペケに会うという名目だけど、この際んなもんどうでもいい。

放課後、俺の方が先に終わったため昇降口でなまえさんを待っていた。待つこと5分ほどした時に、なまえさんのお友達軍団が降りてきた。

「あれ、千冬じゃん」
「ウッス。なまえさんって残ってるんすか?」
「え?なまえ待ち?なまえなら男子に呼び出されて体育館裏行ったけど」
「え!?」
「珍しく急いで呼び出しに向かったからビックリしたけど、千冬と約束あるからか〜」

いくら高嶺の花と言われていても、やっぱり告白はよくされるらしい。(お友達軍団情報)

「あー、でも今日の相手って確かイケメンの宮川くんだったよね」
「サッカー部キャプテンだっけ?」

お友達軍団のお姉さま方がニヤニヤとしながら揶揄ってくる。その情報が確かは分からねえけど、さっきから心が落ち着かない。

「…ちょっと教室に忘れ物取りに行ってくるっす」
「はいはい。千冬、わたしら応援してるから」
「頑張ってね〜」

何だか俺の行動が見透かされてるのが癪に障るけど、俺は良い人たちに背中を押してもらえてて幸せじゃねーか。教室とは真逆に進む俺に、お友達軍団達からのツッコミが聞こえてきたが、それは丁重に無視をさせていただいた。体育館裏はたまに場地さんとサボったりする場所で、確かに人通りは少ないベスト告白スポットだ。

「俺、一年の時からみょうじの事好きだった」

体育館裏の近くに行くと男の声が聞こえてきた。きっとこれがサッカー部キャプテンとなまえさんなんだろうなと察した。顔を出すとバレるかもしれねぇから、このまま話を聞く事にした。

「よかったら、俺と付き合ってください」
「…ごめんなさい。わたし宮川くんのことよく分からないから付き合えない」

凛とした声でやんわりとお断りの返事をしたなまえさん。

「じゃあ友達からはどう?もっと話しかけるから俺の事を知ってよ」

なまえさんは彼の事を思って優しく返事をしたんだろうけど、アイツはそれを何にも分かってないからかグイグイとなまえさんに詰め寄って畳み掛けている。

「いや、えっと」
「というかさ、付き合ってくれなくてもヤるのはアリ?噂で聞いたけどいろんな男とシてんだろ?」

男の一言で俺は額に青筋を立てた。俺はなまえさんだけを見てきて、なまえさんだけを想ってきたから分かる。ヤリマンだの売春だの、ダチが最初になまえさんの噂を話していたけど、あんなもん全部ありえねえ。

「はぁ…。わたしそんな事してないよ」
「いやいや、その見た目だから全然あるだろ。男は皆んな好きじゃなくてもみょうじみたいな美人とシたいって思うんだよ。みょうじだって選びたい放題でいいじゃねーか」

なまえさんはため息を溢しながら否定をしてたが、このアホ男はさらに追い打ちをかけてなまえさんを
辱める。

「俺、結構上手いって言われるから、みょうじの事も満足させられる自信あるけど」

そう言ってなまえさんの手を掴んだところで、俺が黙っている筈もなく

「さっきからうるせーな、オマエ。そんな汚ねえ手でなまえさんに触んじゃねーよ」
「千冬くん!?」
「おまっ…!松野千冬!?」

俺も学校ではまぁまぁ有名らしく、この男も俺の存在を知っていた。

「なまえさんの事を信じられねぇようなてめぇが好きとか言ってんじゃねーぞ?あぁ?あんなクソみたいな噂、なまえさんの事ちゃんと見てたらデマなんて秒で分かんだろボケが。なまえさんの何を見てきたんだてめぇはよ。ふざけんなよ消えろこのクソ男」

なまえさんを侮辱された事が相当頭にきてた俺は、いつもよりも数倍の口の悪さで男を追い詰めた。一呼吸で言いたい事を言うと、目の前の2人は目を点にしていた。

「二度となまえさんに話しかけんなよ。次に何かなまえさんにしたらぶん殴るかんな、覚えとけよアホ」

一方的にボロクソ言って、なまえさんの手を掴んでその場を去った。手を掴んだ瞬間、なまえさんの顔は驚きつつもどこか嬉しそうにしていた。

「千冬くん、ありがとう。…でも力が強くて手が痛い」
「あ、すみません…!」

あの男への苛立ちが残っていて、無意識になまえさんを掴んでいる手に力が入っていた。

「ううん。謝らないで?あぁやって言ってくれて本当に嬉しかったから」
「でしゃばってすみません。でも、俺アイツの言う事許せなくて」

そう言うとなまえさんは照れたのか、俺から目を逸らしてしまった。

「あんなに取り乱した千冬くん初めて見た。怒ると怖いんだね?」
「…恥ずいんでマジで忘れてください」
「忘れないよ。どの言葉も嬉しかったから。本当はね、あーやって言われる事慣れててさ。誰が言ったのか分からないけど、変な噂流れてるんでしょ?」

なまえさんはどこか遠くを見ながら、諦めたように話していた。

「本当の事を知ってて欲しい人達が知ってくれてればいいやって思ってて。それからわたしも強く否定する事辞めちゃったんだよね」
「… 本当の事を知ってて欲しい人って俺も入ってますか」

答えはイエスしか言わないだろう質問だけど、なまえさんの口から聞きたくて、ズルい質問をしてみた。

「千冬くんは今1番知ってて欲しいと思ってる人だよ」

俺の想定していた答えを遥かに上回る回答が来て、今度は俺が照れてなまえさんから目を逸らしてしまった。

体育館裏の青春





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